献杯(けんぱい)

 

「献杯」(けんぱい)とは、
相手に敬意や畏敬の念を表すために、
酒の注がれた杯(盃)を差し出し捧げる行為のことを言います。
 
一般的に、
葬儀後の忌中払いや精進落とし、
また法要後の会食の場で、
食事をいただく前に喪主や施主の挨拶に続いて、
故人に対して「献杯」が行われます。
 
改まった場だけでなく、
居酒屋などで友人数人が集まり、
亡くなった仲間を偲んで飲む場合などでも
「献杯」が行なわれるケースも見られます。
 
 「献杯」を「乾杯と似たようなもの」という
誤った認識をしていると、
残念なことになってしまいますので、
ここからは、
「献杯」に関する様々なポイントを確認しましょう。
 
なお、「献杯」は宗教宗派の教義で定められている訳ではなく、
「慣習」として行われているものです。
但し、葬儀や法事における食事の席で
必ずしも「献杯」が行われる訳ではありません。
例えば、キリスト教では「献杯」を行わないことが通常ですし、
仏教でも、浄土真宗のように
「献杯」は行わないとしている宗派もあります。
 
 
「献杯」は、
基本的には葬儀の「精進落とし」の後に行われます。
親類の元に故人が火葬を済ませて、
戻って来たタイミングで食事をする流れです。
 
「精進落とし」
 
遺族が葬儀の後に会葬者や僧侶を労う目的で用意する食事です。
元々は四十九日の忌明けの際に食べる料理のことを
こう呼んでいました。
仏教の考え方では、
亡くなった後の四十九日目に故人が浄土へ行けるよう、
遺族は四十九日までの間は、肉・魚を食べないようにして、
精進料理を食べるというのが一般的でした。
四十九日目の法要が行われて精進期間が終わると、
遺族は久々のごちそうとして肉や魚を食べます。
これを「精進落とし」と呼ぶようになったのです。
 
現代では、親族等が遠くから集まる負担を軽減するため、
火葬場から戻ったその日のうちに、
初七日の法要を終えるケース(繰り上げ初七日)が多くなりました。
その時に、お世話になった方々に食事を振舞うことを
「精進落とし」と呼んでいます。
 
 
葬儀だけでなく、
法事の「お斎」(おとき)の際も行います。
「お斎」(おとき)とは、
法事の後に僧侶などと一緒に食事をする意味です。
百箇日、一周忌、三十三回忌などと、
法事は種類も数も多いのですが、
どれか一つだけの法事で献杯を行えばよい訳ではなく、
法事をする度に食事の席を設け、
献杯を行うことが理想となります。
故人に敬意を表す意味でも、
法事のお斎の際の献杯も欠かさずに行うようにしましょう。
 
 

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