背守り(せまもり)

「背守り」とは、乳幼児の上衣の背につけるお守りのことを言います。
 
昔の人は「目」には魔除けの力があると信じており、
「背縫」いの「縫い目」にも
背後から忍び寄る魔を防ぐ力があると考えていました。
 
ところが、赤ちゃんが着る着物は背の部分が一枚布で作られ、
「背縫い」がありません。
そこでお母さんたちは、
子供に魔が寄り付かない様に「背縫い」の代わりとなる
魔除けのお守りを付けました。それが「背守り」です。
 
また、昔の人は人間の魂は背中から出入りすると考えていました。
魂が身体から出てしまうと
体調が悪くなったり、ボーっとしたりしてしまい、
それが長い間続くことで死に至るという考えです。
 
7歳までの小さな子供は、
「7歳までは神の子」「7つまでは神のうち」という言葉にもあるように、
より不安定な魂を持った存在だと思われていました。
何かの拍子にポロっと魂を落としてしまい、
いつ神様の所に帰ってもおかしくない、
いつ死んでしまってもおかしくないような存在です。
そのため背中にお守りを付け、魂がこぼれ落ちるのを防いでいたのです。
 
始まりは定かではありませんが、
鎌倉時代に作られた絵巻物「春日権現験記」(かすがごんげんげんき)には
既に「背守り」を縫い付けた着物を着ている子供が描かれていることからも、
とても古い風習であることが分かります。
 
「背守り」には、
可愛い動物や縁起物の刺繍、押絵紋、縫い目だけのもの、
小袋に小豆を入れたものなど、様々なタイプがあります。
最近は、子供のTシャツの背中に刺繍を入れたり、
お守りを縫い付けることが流行っているようです。
 

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