鹿と言えば、
奈良公園を思い浮かべる人も多いのでははいでしょうか。
鹿は古くから、
春日大社の神の使いとして大切に保護されてきました。
春日大社の神鹿(しんろく)
全国に約1,000社ある春日神社の総本社「春日大社」は、
奈良時代の神護景雲2(768)年に
平城京の守護と国民の繁栄を祈願するために
春日の御蓋山(みかさやま)に創建され、
中臣氏・藤原氏の氏神が祀られています。
春日大社の主祭神・の武甕槌命が
常陸国の鹿島神宮から御蓋山へお越しになる時、
白鹿にお乗りになって来られたことから、
神鹿(しんろく)は神様のお供であり、
神の使いとして大切に扱われるようになりました。
現在も奈良の鹿は天然記念物として大切に保護されています。
武甕槌神(たけみかづちのかみ)とは、
大国主神と国譲りの交渉をした建御雷之男神のことです。
『古事記』には、国譲りの交渉の第三の使者に推挙された
建御雷之男神の父神・伊都之尾羽張神(いつのをはばりのかみ)に
その旨を伝えに行った神様が登場していますが、
その神様・天迦久神(あまのかくのかみ)は鹿の神でした。
現在、春日大社がある奈良公園を中心とした地域には、
神の使いとして約1300頭もの鹿が生息しています。
奇祭・御頭祭
毎年4月15日、長野県にある諏訪大社上社では、
「御頭祭」(おんとうさい)という奇祭が行われています。
鎌倉時代から続く最も古い神事のひとつと言われ、
五穀豊穣や狩猟への願いと感謝を込めて行われる神事で、
上社の年中行事の中で、最も重要とされている神事です。
古来、山間部では山で採れた動物を神の恵みとして神前に供え、
それからいただくという風習がありました。
昔は、血の滴る鹿の頭を75頭も備えていたそうですが、
現在は剝製の鹿の頭が3頭供えられる形で行われています。
「紅葉」と「鹿」
ルーツ
古来、鹿は紅葉鳥と呼ばれていました。
晩秋、求愛のために鳴くオス鹿の声が
鳥の声のように聞こえたことが由来なのだそうです。
紅葉と鹿は秋の情景として親しまれ、
『万葉集』や『古今和歌集』にも
秋の歌に鹿と紅葉が登場しています。
百人一首の中で、「紅葉と鹿」が詠まれている歌と言えば、
次の歌になりますね。
「奥山に 紅葉踏み分け 鳴く鹿の
声聞くときぞ 秋はかなしき」
声聞くときぞ 秋はかなしき」
― 猿丸太夫 -
[訳]
人里離れた奥山で、散り敷かれた紅葉を踏み分けながら、
雌鹿が恋しいと鳴いている雄の鹿の声を聞くときこそ、
いよいよ秋は悲しいものだと感じられる。
人里離れた奥山で、散り敷かれた紅葉を踏み分けながら、
雌鹿が恋しいと鳴いている雄の鹿の声を聞くときこそ、
いよいよ秋は悲しいものだと感じられる。
花札の10月札『鹿に紅葉』
花札は安土・桃山時代の「天正かるた」が元となり、
江戸中期には現在の花札が生まれたそうです。
この絵柄カードは12つに分類出来、
それぞれ一年を構成する月々の風物が描かれています。
例えば1月なら「松に鶴」、3月なら「桜に幕」といった感じです。
そして10月の絵柄に描かれているのが「紅葉に鹿」なのです。
この絵柄に描かれている鹿はそっぽを向いています。
このことから無視するなどの意味を持つ「シカト」は
「鹿+10」から生まれたのだそうです。
鹿の肉
鹿の肉は別名「もみじ」と呼ばれています。
脂肪分が少なく、低カロリー(牛・豚の1/3)で高タンパク。
更に、DHA、鉄分も豊富なことから、
ヘルシーな食材として女性に人気があります。
因みに、鹿肉に含まれる「ヘム鉄」と呼ばれる鉄分は、
人間の身体に吸収されやすいので、貧血や冷え性の人に特におススメです。
主な御利益
- 五穀豊穣
- 厄除け
- 交通安全