桜の文様

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桜の花が観賞されるようになったのは平安時代ですが、
貴族達はそれまでの「梅」に加えて「桜」を愛でるようになり、
文学や美術にも登場します。
 
当時の桜は「山桜」で、文様もそれを意匠化したものですが、
次第に「八重桜」や「枝垂桜」など種類が増え、
江戸時代には「桜川」や「桜楓」、「花筏」などの
組み合わせ文様も生まれました。
 
奈良の吉野山や京都の嵐山など、
桜の名所が文様化されていることもあります。
 

 

文様

桜文(または桜花文)

さくらの「さ」は「稲」、「くら」は神が宿る座を意味し、
豊作を願っているという説があります。
桜は春の花ですが、写実的に描かれたものを除き、
文様化された桜は季節を問わず身につけることが出来ます。
 

八重桜

通常は花は5弁ですが、それ以上のものは「八重桜」と呼びます。
「八重桜」は一重桜が散った後に開花し、
花びらが幾重にも重なっているため、見た目も一層華やかです。
「八重桜」の文様は室町時代以降に使われるようになりました。
 

枝垂れ桜

たおやかな枝が垂れ下がる枝垂れ桜を文様化したもので、
散りゆく桜の花びらとともに描かれます。
こうした風情のある文様は、能装束や小袖にも見られます。
写実的なものから、意匠化されて一筋の枝に花を配しただけのものも。
「枝垂れ桜」は桜文様のバリエーションが増えた
桃山時代以降に生まれた文様の一つです。
 

小桜

 小さな桜の花を花びらを一面に散らした文様です。
主に、「江戸小紋」などの小紋染めのきものや
長襦袢、白生地の地紋に用いられ、
桜の花びらの形を切り抜いた型紙を使って染め上げます。
季節や年代を問わず楽しめる意匠です。
また、鹿のなめし皮を原料にした印伝の文様にも使われ、
バッグや袋物などが作られています。
 

桜川

 桜の散り際の美しい情景を文様にしたものです。
流水に桜の花びらが降りかかる意匠化されたもので、
江戸時代の女性のきものにも多く用いられました。
散った桜が水に流されていく様子を表現したものは、
「桜流し」とも言われます。
 

桜楓

春の桜と秋の楓を組み合わせて一つの文様にしたもので、
季節を問わず着ることが出来ます。
京都・智積院にある障壁画・国宝「桜図」「楓図」が有名で、
この作品をモチーフにした桜風文様の意匠も多く、
更に、流水や雲、霞などを組み合わせて、
現代もきものや帯に使われています。
 

桜山

山と桜を組み合わせて、満開の桜山の様子を表現した文様です。
桜の名所である奈良県の吉野山をイメージして作られたものが多く、
薄ピンク色に染まった吉野の山並みが目に浮かんできます。
 

桜吹雪

桜の開花を心待ちにして、花を楽しみ、
更に散りゆく花びらにも思いを寄せます。
その風情を意匠化したのが「桜吹雪」です。
 

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