立涌(たちわき、たちわく)

「立涌」
「たちわき」とか「たちわく」とも呼ばれ、
2本の曲線を用いて
水蒸気がゆらゆらと涌き立ち昇っていく様子を表す
「有職文様」のひとつです。
古代Chinaから伝来した唐草文様の一種が、
平安時代の和風化とともにこの形になったとの説もあります。
 
模様として使われるようになったのは奈良時代からです。
平安時代以降は「有職文様」として用いられるようになりました。
波型の曲線が膨らんだ部分の中に雲や波・藤を入れた
「雲立涌」「波立涌」「藤立涌」は「有職文様」として使われ、
特に雲をあしらった「雲立涌」は、
親王や関白などの身分の高い装束に使われました。
また、能装束にも取り入れられました。
 
 

1.立涌文

波状の曲線を向かい合わせに並べて、
膨らみと窪みを繰り返す文様です。
現在も様々な着物や帯の柄に使われ、
普段着から礼装用まで多種多様に用いられています。
立涌の文様は、波形の曲線を生かして単独であしらわれる他、
2本の曲線の中に菊や松、蝶など様々な文様を配したりと、
バリエーションは豊富です。
 

2.立涌取り

「雲取り」や「霰取り」などと同じように、
文様を構成する方法の一つ。
立涌の形に空間を切り取り、曲線の膨らみの中やその周辺に
草花文様などを配したものです。文様にリズム感と変化が付きます。
 

3.松立涌

立涌の膨らみの中に若松を配した文様です。
若松は芽生えてから余り年が経たない小さな松で、
新鮮さと将来性のある植物とされています。
その若松が立ち昇る雲気の中にあしらった「松立涌」は、
まさに「吉祥文様」と言えるでしょう。
主に、フォーマル用の帯の衣装として用いられています
 

4.蝶立涌

立涌と蝶を組み合わせた文様で、振袖などの帯に見られます。
曲線の膨らみの中に蝶を入れず、
部分的にあしらうことで、蝶が持つ優雅さが生きています。
蝶の中でも羽根に斑点が付いている揚羽蝶は一層華やか。
 

5.菊立涌

立涌の中に菊の花を入れたもの、
または菊花で立涌をかたどったものです。
古代Chinaで菊花は、
観賞したり、延命長寿の霊草として薬に用いていました。
この風習が奈良時代に伝来し、
江戸時代になると衣装などの文様に多用されるようになりました。
 

6.雲立涌

立涌の膨らみの中に「瑞雲」を入れた文様ですが、
「菊立涌」と同じように、
雲のみで立涌の形を構成したものもあります。
「有職文様」の一つとして、親王の指貫や関白の方に用いられ、
現在も格調のある文様として、礼装用の帯などに使われています。
また、「雲立涌」は染めにも表現され、小紋などにも見られます。
 
 

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