熨斗鮑(のしあわび)

 

「熨斗鮑」(のしあわび)とは、
鮑の肉を薄く剥ぎ、引き伸ばして乾かしたものです。
古くは食料に用い、後には儀式の肴(さかな)として、
また、進物などに添えて贈りました。
 
 

「鮑」(あわび)は神様への供物の代表的なものですが、
栄養価が高く、日持ちもすること、
アワビは100年生きると言われていること、
そして何度ものして長く伸ばしていることから、
長寿を願う縁起物となり、最高級の贈り物として扱われてきました。
 
「鮑」(あわび)は日本古来より親しまれ、
2000年前から伊勢神宮に奉納される品の一つになっています。
伊勢神宮にはその由来が伝わっています。
伊勢神宮の初代斎宮である倭姫命(やまとひめのみこと)が、
海女の「おべん」に差し出されたアワビを食したところ、
あまりの美味しさにびっくり!
それ以来、伊勢神宮に献上するようになったそうです。
現在でも、伊勢神宮などでの神事には、
「鮑」(あわび)で作られた「熨斗鮑」(のしあわび)が使われています。
「鮑」(あわび)をご神体とする神社もあるほどです。
 
 

熨斗鮑(のしあわび)

「鮑」(あわび)以外のものが贈答に用いられるようになっても、
「熨斗鮑」(のしあわび)や「干し鮑」(ほしあわび)が添えられていましたが、
最高の「鮑」(あわび)を贈りたいという思いが、
干して伸ばして小さく切った「熨斗」(のし)へと変化していきました。
 

 
 
日本で「熨斗鮑」が誕生したのはかなり古く、
『日本書紀』(720年)にある記載が最初です。
伊勢神宮への献上品として鮑を贈る際、
腐るのを防止するために薄く切って乾燥させたのが
「熨斗鮑」の始まりと言われいます。
 
『肥前国風土記』(8世紀)には、
民が命乞いをするために
木の皮を「熨斗鮑」に見立てて作ったという話が残っており、
かなり古くから「熨斗鮑」の文化があったことが分かります。
その後、鮑の栄養価の高さから非常食として用いられたり、
熨斗鮑を作成する際の「伸す」という行為が
喜びや寿命を延ばすという意味に捉えられて、
出陣時の縁起物として扱われたりしました。
 
贈り物として使われ始めたのは室町時代の頃で、
武家での結納に使われていたようです。
ただ、庶民レベルまで文化として熨斗鮑が広がったのは、
江戸時代になってからではないかと言われています。
  
 

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