たけのこ

 
「たけのこ」は、成長が早く、
天に向かって真っすぐ伸びることから、
「子供がすくすく成長するように」とか
「将来の出世を願って」という意味がある
縁起物です。
 

たけのこ

 
「たけのこ」とは竹の地下茎から出てくる
若い芽のことです。
竹にはいくつかの種類がありますが、
「たけのこ」は全ての竹の芽の総称として
使われています。
 
「たけのこ」には、産毛が生えた皮が何枚も
重なっていて、すっぽりと包まれています。
猪や狐などの動物に食べられないようにする
ためです。
背が伸びるにつれて、皮は一枚一枚、自然と
剝がれ落ちて、全て落ちると竹になります。
その期間は大体30日くらい。
「たけのこ」はまさに脱皮して「竹」になる
のです。
 

筍?竹の子?

「たけのこ」を表す漢字には、
「筍」と「竹の子」の2つがあります。
使い分けとしては、
土に埋まっている収穫前の状態が「竹の子」で、収穫し食用になったものが「筍」と
一般的には言われています。
 
「筍」
「筍」は「たけかんむり」に「旬」と書きます。
「旬」は時間の単位で言うと「10日間」。「たけのこ」の成長は非常に早く、
地上に芽を出してから「10日間」で
「竹」になることから、「筍」という漢字が
成り立ったと言われています。
そのすくすくと成長する様子から、
元気さと健やかさの象徴と言われています。
 
「竹の子」
一方「竹の子」は、竹の地下茎から伸びた
若い芽であることから「竹の子供」という
意味に由来して付けられたものです。
 

縁起物の「たけのこ」

「たけのこ」は、成長が早く、
すくすくと真っ直ぐに伸びるため、
古くから、子供の健やかな成長や
立身出世、家運の向上を祈願して、
「お正月」や雑節「端午の節句」などに
食されてきました。
 
 
真っ直ぐに伸びる
「たけのこ」は太陽に向かって真っすぐに伸びるため、神様からの御加護が得られやすいと考えられています。
まっすぐ伸びるたけのこを食べることで、回り道をせず素晴らしい生き方ができるように
 
成長が早い
「たけのこ」は1日であっという間に伸びるので、成長が早いという特徴にあやかって、「たけのこのように早く成長して大きくなって欲しい」という親の願いが込められています。
 
強い風に煽られても簡単に倒れない
「竹」は強い風に煽られても
流れに身を任せて力を分散させるため
簡単に折れることはありません。
人生においてたくさんの荒波にもまれても上手に身を任せながら乗り越えていけるように
 
滅多に病気にならないから
「竹」は滅多に病気をすることはなく、
枯れることはほとんどありません。
病気に強い「たけのこ」を食べることで、
病気知らずな強い体を手に入れることができるように
 
次々子供を増やすから
「竹」は次々に子供を増やすという特徴があります。跡継ぎに恵まれない家でもたけのこを食べることで子宝に恵まれると信じられていた
 
 

古くから人々に愛されてきた
「たけのこ」の歴史

 
「たけのこ」は『古事記』に出てくるほど
昔から親しまれてきました。
 
古事記
亡き妻・伊耶那美命いざなみのみことに会いたい気持ちが募り、
とうとう死者の国である黄泉国に会いに
行った伊耶那岐命いざなきのみことでしたが、すっかり変わり
果てた姿になってしまった伊耶那美命いざなみのみこと
恐れおののき逃げ出してしまいます。
一方醜い姿を見られ、
恥をかかされたと怒った伊耶那美命いざなみのみことは、黄泉醜女よもつしこめ伊耶那岐命いざなきのみことの後を追わせます。
必死で逃げる伊耶那岐命いざなきのみことは、「湯津々間櫛ゆつつまくし」の折った歯を投げるとタケノコになり、黄泉醜女よもつしこめがそれを食べている間に
黄泉の国から脱出することが出来ました。
 

linderabella.hatenadiary.com

 
 
その当時食用とされていたのは、日本に古来より自生していた「真竹」(まだけ)ではないか
と言われています。
 
 
その後、「孟宗竹」(もうそうちく)がChinaから日本に伝わり、日本各地に広まったとされています。
 
 
「たけのこ」が日本で広く食べられるようになったのは、江戸時代と言われています。
江戸時代初期の寛永20(1643)年に刊行された
我が国初の料理専門書『料理物語』の
「第七 青物之部」には「竹子(たけのこ)」の
調理法が掲載されています。
 
  
 
汁 からしあへ かうの物 さしみ 
つけ物 やく むしても色々
かわともにやきてつかひ候也
 
当時はまだ「醤油」が一般的に流通していなかったので、現在の筍料理の主流である
「煮物」の表記はありませんが、
辛子和え、刺身、香の物、漬物、蒸し物等、今では余り見かけない料理が並んでいます。
 
 

「食用たけのこ」の種類と旬

「竹」は70種類程あると言われていますが、そのうち食用にされているものは
「孟宗竹」(もうそうちく)を始め、
ほんの数種類です。
その「食用たけのこ」の代表的な品種を
紹介します。
中には、収穫量が限られているものもあるので、地域によっては、目にする機会が少ない品種もあります。
 
孟宗竹(もうそうちく)
大型で厚みがあり、実は白くて柔らかく、
えぐみも少ない、独特の甘味を含んだ
上品な味わいと、歯応えがあります。
軟らかい先端部分は酢の物や和え物に、
歯応えのある中央部分は煮物や炒め物と
幅広く利用出来ます。
 
真竹、苦竹(まだけ)
 
 
細身で皮には黒い斑模様があるのが特徴。
灰汁が強く少し苦味があることから、
「苦竹」とも呼ばれます。
「孟宗竹」がもうすっかり竹になった
梅雨前期に獲れます。
 
淡竹、甘竹(はちく)
 
薄赤茶色の薄い皮に包まれ、
ツルっとしていて産毛はほとんどない、
少し細身のたけのこです。
味はやや甘味があり淡白で繊細、
えぐみも少ないです。旬は5月。
 
四方竹(しほうちく)
 
主に高知県で栽培される品種で、
細長くキレイな黄緑色をしています。
茎の断面が丸みを帯びた四角になる事から
その名が付けられたと思われます。
全国でも珍しい秋に収穫されるたけのこで
10月から11月上旬が旬。
 
根曲がり竹(ねまがりだけ)
 
根元が少し曲って育つ「たけのこ」で、
北日本を中心に生産されています。
細く小さいので「姫たけのこ」とも
呼ばれます。
6月頃に旬を迎えます。
灰汁が少ないので、皮を剥いたらアク抜きせずに、味噌汁、煮物、天ぷらなどにします。
 
 

「たけのこ」の栄養

注目すべきは、「食物繊維」の多さです。
「たけのこ」に多く含まれるのは不溶性の
食物繊維である「セルロース」です。
腸を刺激して排便をスムーズにする他、
水分と一緒に人体にとって不要なものを
吸着して排出してくれます。
但し、摂り過ぎると腹痛を引き起こすだけ
でなく、却って便秘の原因にもなるので
注意しましょう。
 
「たんぱく質」を多く含み、
ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、
ミネラルなども含みます。
 
「たけのこ」には、アミノ酸の種類である
「グルタミン酸」「アスパラギン酸」を含み、
これが旨み成分となっています。
 
また「アスパラギン酸」は
疲労回復効果があると言われています。
 
必須アミノ酸の「ロイシン」は
運動時のエネルギー源となり、
疲労回復にもおススメです。
 
切り口に見られる白い粉状のものは
アミノ酸の一つ「チロシン」で、
摂取すると脳内物質のドーパミンが増加し、
抗ストレス作用があるとされています。
皮膚や髪の毛の色素になる「メラニン」の
原料になります。
 

「たけのこ」の選び方

全体がずんぐりとして、太く短いもの、
持った時手にずしりと重みが感じられるもの
を選びましょう。
 
皮が緑がかったものや黒っぽいものは
日に当たっているので、
「えぐみ」が強い可能性あります。
皮にツヤがあり、うぶ毛の揃い、
薄茶色で、穂先が黄色がかったものを
選びましょう。
 
また切り口が白く、みずみずしいものが
おすすめです。
 

「たけのこ」の料理法

「たけのこ」には、独特の「灰汁」(あく)
あります。
 
「灰汁」は「シュウ酸」と「ホモゲンチジン酸」という物質から出来ており、「えぐみ」として
味に大きく影響します。
「えぐみ」があると、苦みや渋みといった
舌を刺激するような風味になり、美味しさが
半減してしまいます。
また「シュウ酸」は「結石」の原因になります。
 
収穫された直後から「灰汁」が増して、
えぐみが強くなりますから、出来るだけ
早めに下ゆでしましょう。

www.kagome.co.jp

 
「たけのこ」は部分によって硬さが違うので、
用途に合わせた使い分けがおススメです。
 
「先端」は軟らかいので、
「炊き込みご飯」「サラダ」「和え物」に
適しています。
 
 
「中央部」は程良い硬さなので、
「煮物」や「揚げ物」に適しています。
 
 
「根元」は繊維が多く硬めですが、
薄切りにして炒めたりするなどすれば、
美味しくいただくことが出来ます。