蚊帳(かや)

 
「蚊帳」は夏に虫除けのために吊るしますが、
伝統的には魔除けの意味もありました。
 
古来日本人は「ヘンプ」(麻)を大いに活用してきました。
ヘンプはアサ科の植物です。
繊維素材として使われる「麻」は、
元々日本に自生し、活用されてきました。
紀元前8000 万年(約1万年前)の鳥浜遺跡(福井県)で
麻縄が出土した例があります。
現代でも、注連縄(しめなわ)や鈴緒(すずお)
相撲で横綱が身につける化粧まわしなど
神事に関係する場面や、
七味唐辛子の麻の実など、意外なところで活用されています。
 

 
ヘンプシード(麻の実)
近年スーパーフードとして注目されています。
特徴としては、良質のタンパク質・脂質を適切に摂ることが出来、
ミネラルが豊富です。
 
 
大麻(おおぬさ)は、
伝統的に魔除けの素材として用いられてきました。
また麻の丈夫さ、成長の早さ(100日程度で4m程に成長)は
非常に縁起が良いと言われてきました。
伊勢神宮でいただく「御神札」の正式名称は
「神宮大麻」(じんぐうたいま)と呼ばれ、
同様にお祓いで使う道具そのものを「大麻」(おおぬさ)と呼び、
日本神道と大麻は切っても切れない関係があります。
 

 
古都・奈良では、
寺の様々な儀式に使う薄い織物を作ってきました。
その技術を応用して、
江戸時代には蚊帳を盛んに生産するようになった。
明治に機械が導入されると一層発展し、
大正10年には全国の蚊帳生産の頂点に達しました。
 

 
蚊帳生地は東大寺でも大活躍し、
毎年8月に行われる「お身拭い」の際には、
年に一度大仏様を掃き清めるのに
蚊帳生地が使われたと言われています。
 
かつて多くの家庭で使われた蚊帳も
昭和40年代になると、
生活様式の変化によって需要が激減しましたが、
そんな中、蚊帳の粗目織物を生かして
「ふきん」が製品化され、
年間200万枚の奈良のふきんが
全国に出荷されるようになりました。
 

 

f:id:linderabella:20200616092637j:plain