菖蒲(しょうぶ)

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「端午の節句」は「菖蒲の節句」とも呼ばれ、
現在では「こどもの日」に制定されており、
更に「薬の日」でもあります。
飛鳥時代には野山で「薬猟」(くすりがり)と呼ばれる
野草摘みの行事が行われていました。
 
 

菖蒲(しょうぶ)

旧暦五月は高温多湿であることから、
伝染病や害虫が発生する時期です。
「菖蒲」(しょうぶ)
葉が剣のように尖っていて香りの強く、
薬効に優れていることから、
呪力が強い植物と考えられていました。
そのため古より、門戸にかけて悪鬼を祓って
魔除けをしたり、無病息災を祈りました。
 
奈良時代には、無病息災を祈るための
宮中行事が行われたとされており、
菖蒲を浸した「菖蒲酒」を飲む風習が
ありました。
また貴族の間では、
菖蒲を髪に刺す「菖蒲蔓」(あやめのかずら)
枕の下に敷く「菖蒲枕」(あやめのまくら)などを
行って邪気を祓いました。
 
 
この「菖蒲」(しょうぶ)の根茎を干した
生薬の「葛根」(かっこん)
鎮痛、血行促進作用を持つとされ、
神経痛やリウマチ、腰痛などに
用いられてきました。
 
昔から民間療法の風邪薬として有名な
漢方薬の「葛根湯」には、
主成分の「葛根 (葛の根)」の他に「生姜」、
「シナモン(肉桂・桂皮)」、「大棗」(なつめ)
「麻黄」(まおう)、「芍薬」(しゃくやく)
「甘草」(かんぞう)といった植物が調合されて
います。
「葛」(くず)や「生姜」(しょうが)の根が
全身を温めると同時に、
7種類の植物生薬が持つ相互作用によって、
血行を良くすることから、発汗が促される他、
分泌機能や代謝機能を高めてくれるため、
老廃物を取り除いてくれると言われています。
 
 

菖蒲・花菖蒲・カキツバタ・あやめ

「菖蒲」「花菖蒲」「かきつばた」「あやめ」の
4種の花は、
葉や花の色や形が似ていたり、
別名や名前がかぶっていたりと紛らわしいため、
間違えられていることがよくあります。
 
「しょうぶ」と「あやめ」・・・、
漢字で書けばどちらも「菖蒲」になります。
 
「あやめ」の名の由来は、
花びらに網目の模様があったことから、
「文目」(あやめ)と呼ばれるようになったと
言われています。
 
一方「しょうぶ」は
飛鳥・奈良時代には「あやめぐさ」と
呼ばれていました。
「しょうぶ」を使った
邪気払いの儀式をしていた女性を
「あやめ」と呼んでいたからだと
言われています。
それが、芳香と厄除けの植物である
「菖蒲」の字を当ててから、
「しょうぶ」の呼び名が生まれました。
 
「しょうぶ」と「あやめ」の決定的な違いは、
「しょうぶ」が「サトイモ科」なのに対し、
「あやめ」は「アヤメ科」。
また姿が似ている
「はなしょうぶ」や「かきつばた」も
「アヤメ科」に属しています。
 
菖蒲(しょうぶ)
菖蒲は、同じサトイモ科の蒲の穂のような、薄黄緑色の目立たない花を咲かせます。
花弁がないので、よくよく見ないと見つからないほど地味な花です。
つまり、色鮮やかな花びらをしている植物は、「菖蒲」ではありません。
 
 
花菖蒲(はなしょうぶ)
花菖蒲は、花びらの付け根が黄色くなっているのが特徴です。
 
杜若(かきつばた)
杜若は、花びらの付け根が白くなっているのが特徴です。
 
あやめ(綾目、文目)
あやめは、花びらの根本が網目状の線が入っているのが特徴です。
 
 

菖蒲酒

「菖蒲酒」には
厄除けや邪気払い効果があると言われています。
また、菖蒲の香りは
リラックス効果が期待出来ると言われています。
菖蒲の根の部分は漢方としても利用されていて、
主に鎮痛や消化促進の作用などが
期待されています。
 
奈良時代には、無病息災を祈るための
宮中行事が行われたとされており、
菖蒲を浸した酒「菖蒲酒」を飲む風習が
ありました。
菖蒲の根の部分は
漢方としても利用されていて、
主に鎮痛や消化促進の作用などが
期待出来ると言われています。
 
1月 屠蘇酒 (とそしゅ)
2月 梅花酒 (ばいかしゅ)
3月 桃花酒 (とうかしゅ)
4月 花見酒 (はなみざけ)
5月 菖蒲酒 (しょうぶざけ)
6月 岩魚酒 (いわなしゅ)
7月 竹管の酒 (ちくかんのさけ)
8月 鰻酒 (うなぎざけ)
9月 月見酒 (つきみざけ)
10月 菊花酒 (きくかしゅ)
11月 花梨酒 (かりんしゅ)
12月 鰭酒 (ひれざけ)
 
[菖蒲酒の作り方]
「菖蒲酒」は、菖蒲の根の部分を日本酒に入れて作るのですが、菖蒲の根は手に入れるのが難しいので、葉の根元の部分を利用してみました。
  1. 菖蒲の葉の根元部分を薄く切ります。
  2. 徳利や銚子などに日本酒入れます。
  3. 2.に1.の薄く切った菖蒲を数枚程入れたら、完成!
 
菖蒲は、長く日本酒に浸してしまうと
アクが出てしまうため、飲む前に30分程度浸しましょう。
そして、すぐ飲み切ってしまって下さい。
 
 

菖蒲湯

「端午の節句」には無病息災を願って
「菖蒲」の葉を入れたお風呂に入る慣習が
あります。
「強い香りが邪気を払う」とされているためです。
「菖蒲の葉を頭に巻くと頭が良くなる」
といった言い伝えもあるため、
おまじないとしてお子様と一緒に楽しんでみては
いかがでしょうか。
 
「菖蒲湯」の清々しい香りは、
リラックス効果が期待出来る他、
漢方においては血行促進作用によって
肩こり・腰痛解消などに役立つと言われています。
 

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 文様

文様としては、菖蒲の花や茎、葉が用いられます。
季節感を出す場合は、菖蒲を単独で使い、
「御所解き文様」のような風景の中に、
流水とともに表現されることもあります。
また、「尚武(=勝負)」に通じるために
武家に好まれ、馬具や武具に使われた
「菖蒲革」(しょうぶかわ)という文様もあります。
「菖蒲革」(しょうぶかわ)は、
鹿のなめし革などを藍色で染めて、
白く小さな菖蒲文様を染め抜いた
染め革の一種です。
現代は、菖蒲の葉は花をかたどったものが
小紋などに染められています。

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