柊(ひいらぎ)

 
「柊」(ひいらぎ)は、
モクセイ科の常緑小高木です。
葉に鋸の歯のような
鋭いギザギザした棘があることから
邪気を払う木として
庭や生垣に植えられてきました。
 
 

(ひいらぎ)

 
「木」偏に「冬」で「柊」と書くように、
ヒイラギは冬を代表する植物です。
クリスマスの飾り用に
「ヒイラギ」が使われますが、こちらは、
昭和時代に輸入されたモチノキ科の
「セイヨウヒイラギ(クリスマス・ホーリー)」で、
5月に花期を迎え、
秋から冬にかけて赤い実を結実します。
 
 
一方、日本特産の「柊」は「モクセイ科」で、
庭木や垣根として人気の常緑の小高木です。
関東以西から台湾の山地に自生していて、
葉の周辺部はノコギリ状で、
先が鋭く尖って棘のようになっていますが、
老木になると葉の鋭い棘が無くなり
縁は丸くなります
 
 
秋になると、葉の付け根に
5mm程の白色の小花が放射状に咲き、
キンモクセイに似た香りがほのかにします。
 
 
そして花が咲いた翌年の5~6月頃に、
濃い黒紫色の1~2㎝程の楕円形の果実を
実らせます。
 
 
江戸時代中期になると、自生する「柊」を
園芸用に改良するのが盛んになりました。
1695年の『花壇地錦抄』(かだんちきんしょう)
にはその経緯が記述されています。
 
江戸時代後期になると、更に品種改良が進み、
『草木奇品家雅見』(そうもくきひんかがみ)には、
黄斑の入った「黄金ヒイラギ」や、
芽出しの時に紅紫色になる「染井五三郎つづれ」
など7種が紹介されています。
明治以降になると、詩歌に「柊」が
多く詠まれるようになりました。
 
 

名前の由来

「ひいらぎ」の日本名の漢字は
「疼木」と書くこともあります。
「疼」は「ひいらぐ(ヒリヒリ痛む)」
という意味の古語で、
葉のギザギザした棘に触れると
疼痛を起こすことに由来します。
別名に「ひらぎ」「鬼の目突き」「杠谷樹」
などがあります。
 
漢名の「枸骨」は、 モチノキ科の
「ヒイラギモチ(柊黐)」のことを指します。
他にも、「ひらぎ」「鬼の目突き」「杠谷樹」などといった別名もあります。
 
学名はOsmanthus heterophyllusで、
属名はギリシア語のosme [香り]+anthos[花]、
種小名は「異なる葉」を意味し、
若い木にある棘状の葉の鋸歯が、
老木になるとなくなる性質に由来します。
 
なお花言葉は「保護」「用心深さ」
「先見の明」などです。
 

魔除けの効果

 
「柊」と日本人の生活の関わりは、
「魔除けの効果」が信じられるようになった
頃から始まりました。
『続日本紀』(しょくにほんぎ)(797年)には、
献上された大きな「柊」を、文武天皇が
伊勢大神宮に奉じた記録があります。
 
紀貫之の『土佐日記』(935年頃)に記された
元旦の項には、次のように京の風習を
懐かしむ箇所があります。
 
今日都のみぞ思ひやらるる、
小家の門の端出之縄、なよしの頭の、
ひひらぎ等いかにとぞ言ひあへなる
 
今日は都のことばかり思いやられる。
庶民の家の門に飾ってある
注連縄の鯔(ぼら)のお頭(かしら)
(ひいらぎ)はどんな具合だろうかと
皆で言い合っているようだ。
 
「なよし」とは鯔(ぼら)のことで、
節分の時に門口に鰯の頭と柊を飾る
伝統風習の原型です。
それが今日まで受け継がれているのです。
 

柊鰯

 
「節分」に「柊鰯」を飾るという習慣は、
紀貫之の『土佐日記』にも見られるように、
平安時代から続いています。
当時は、「節分」は季節の変わり目で、
鬼が現れやすい日とされていました。
 

 
そこで、「節分」の夜、「魔除け」として、
焼いた鰯の頭を柊の小枝に刺して、
門口に挿しました。
悪鬼が枝で目を刺し、鰯のニオイに閉口して
逃げ出すという呪いです。
鰯の他にも「大蒜」(にんにく)、「辣韭」(らっきょう)
などニオイの強いものを刺したり、
髪の毛を焼いたりもしました。
なお、焼いた鰯の頭を柊の小枝に刺した
「柊鰯」(ひいらぎいわし)は、地方によって、
「節分いわし」とか「焼鰯」(やいがし)などと
呼ばれています。
 

縁起木

棘のある樹木には魔除けの効果があるとされ、
古くから庭木として利用されてきました。
 
昔は鬼が住むと言われる
「鬼門」(北東)に「柊」、
「裏鬼門」(南西)に「南天の木」を植え、
邪気(鬼)を寄せ付けないようにする
風習がありました。
 
 
庭に「柊」(ひいらぎ)を植えることについては
以下の説があります。
 
1.鬼門除けのため、
  北東に柊(ひいらぎ)
  南西に南天(なんてん)を植えると良い。
 
2.柊(ひいらぎ)を植える方角は
  北西あるいは北が吉。
 
3.「開き」に通じるので縁起が良い。
 
南天は「難を転じる」、
柊は「福は内、幸福」の意味があり、
そのことから庭の北東「表鬼門」には南天を、
南西「裏鬼門」には柊を植えたりします。
また柊は、クロガネモチやセンリョウ、マンリョウなどと同じく、
美しい赤い実をつけることから
「金のなる木」として繁栄を意味します。
 

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クリスマスの「ヒイラギ」と
節分の「柊」は別物

 クリスマス時期によく目にする
 赤い実をつける「セイヨウヒイラギ」
  • 植物名:セイヨウヒイラギ
  • 別 名:イングリッシュホーリー、
        クリスマスホーリー
  • 学 名:Ilex aquifolium
  • 科 名:モチノキ科
 
  節分に飾る「柊」
  • 植物名:柊(ひいらぎ)
  • 学 名:Osmanthus heterophyllus
  • 花 期:11月~12月
  • 実の時期:5月~6月
  • 実の色:黒紫色