伊邪那美命

(いざなみのみこと)
記紀の天地開闢神話の終わりに現れた女神。
国生み」「神生み」を行なった創造の女神であり、
母神であると同時に、死に関わる神という顔を併せ持った神です。
 
 

どんな神様?

夫・伊邪那岐命と共に日本の国土や自然物を象徴する神々を生みますが、
神生み」の途中、火神・火之迦具土神ひのかぐつちのかみ を生んだことで、
陰部ほとを焼かれて病み伏します。
その苦痛の中で、
金・土・水などの神々を嘔吐物・糞・尿から生みました。
 
<鉱山から鍛冶・鋳物まで司る神>
  • 吐瀉物 ➡ 金山毘古神  (かなやまびこのかみ)
  •  〃  ➡ 金山毘売神  (かなやまびめのかみ)
 
<土と関係の深い農業・製陶業・造園業・土木業などの神>
  • 大 便 ➡ 波邇夜須毘古神(はにやすびこのかみ)
  •  〃  ➡ 波邇夜須毘売神(はにやすびめのかみ)
 
<水神にして豊穣をもたらす農耕神>
  • 尿   ➡ 彌都波能売神 (みつはのめのかみ)
  • 〃   ➡ 和久産巣日神 (わくむすひのかみ)
 
終に神避かむさりました。
伊邪那美命は、神でありながら最初に死を体験し、
それによって「黄泉の国」(死の国)が始まったとされます。
 
妻の死を悲しんだ伊耶那岐神は、
出雲国と伯伎国の境の比婆山(ひばやま)に葬りました。
 
 
伊邪那岐命は一旦、「黄泉の国」に迎えに来てくれますが、
既に腐敗し、雷神に取り囲まれた変わり果てた姿を見て逃げ出したため、
激怒して黄泉の軍勢を率いて追いかけます。
 
この世とあの世の境界である「黄泉比良坂よもつひらさか」で対峙した伊邪那美命は、
「これからは地上の人間を一日千人殺すことにする」と言い放つと、
伊邪那岐命は「それならば私は一日に千五百の産屋を建てよう」と
宣言しました。
この「事戸渡ことどわたし」の神話は、人間の生と死の起源とされます。
大地に繋がる伊邪那美命が
「生」(生成・生産)と強く関わるのは当然ですが、
その対極である「死」とも分かち難く結び付いています。
 
 

墓所

伊邪那美命の墓所とされる
「比婆山」(ひばやま)とされる場所は、
広島・島根・鳥取3県、約10ヶ所が知られています。
 
明治政府は明治33(1900)年に調査を行い、
宮内省は松江市八雲村の「神納山」(かんなやま)
最も有力な陵墓参考地に認定。
(「岩坂陵墓参考地いわさかりょうぼさんこうち」)。
現在も宮内庁の管理下で、立ち入り禁止になっています。
区域内には直径約20mの円墳が有ると伝えられています。
 
一方内務省は、
鳥取県日南町と島根県奥出雲町の境にある
船通山の北にある「御墓山」を
「伊弉冉尊御陵流伝地」に指定していました。
 
事記解読に初めて成功した本居宣長の『古事記伝』の記述、
また鉄製品を作る最良の砂鉄の産地が雲伯国境地帯であることから、
出雲と伯耆の境に近い、
島根県安来市の「比婆山」の方が妥当性が高いとしています。
広島県庄原市から島根県仁多郡奥出雲町境にある「比婆山」は、
現在、「国定公園」に指定されています。
 
一方『日本書紀』には、
紀伊の熊野の有馬村(三重県熊野市有馬の「花窟神社」)に葬られたと
記されています。
 
 

別称

  • 伊邪那美命  ・・・『古事記』
  • 伊弉冉神   ・・・『日本書紀』
  • 熊野夫須美大神くまのふすみのおおかみ・・・熊野速玉大社、熊野那智大社の主祭神
  • 黄泉津大神よもつおおかみ   ・・・黄泉国の主宰神
  • 道敷大神ちしきのおおかみ   ・・・黄泉比良坂で伊邪那岐命に追いついた神
 
 

ご利益

伊邪那美命は万物を生み出す強い生命力の持ち主なので、
参拝者の心や体にエネルギーを与えてくれる神様です。
万物の母的存在です。
  • 子孫繁栄
  • 夫婦円満
  • 延命長寿
  • 縁結び
  • 安産
  • 子宝
  • 家内安全
 
 

神格

  • 万物を生み出す生成力
  • 死を司る神
  • 大地の母神
  • 結婚の神

 

 

伊邪那美命をお祀りする神社