火之迦具土神の体から生まれた山の神々

(斬られた火之迦具土神の体から生まれた山の神々)
伊邪那美命いざなみのみこと火之迦具土神ひのかぐつちのかみを産んだことによる火傷により
死んでしまったことに怒った伊邪那岐命いざなぎのみこと
火之迦具土神ひのかぐつちのかみ十拳剣とつかのつるぎ天之尾羽張あめのおはばり」で斬り殺してしまいます。
殺された火之迦具土神ひのかぐつちのかみからも8柱の神々が新たに誕生しました。
 
「山津見神」(やまつみのかみ)
「津」は「の」、「見」は「神霊」ということから、
「山の神霊」とする説があります。
 
火の神である火之迦具土神ひのかぐつちのかみの屍体から生まれたことから、
「山津見」を一般の山でなく、
「火山」に限定された神格と見る説があります。
多くの火山が生まれ、
その血は火山の活動や噴出物を表象しているとされています。
 

火之迦具土神の死体から生まれた神々

 
 
火之迦具土神の「頭」から成った神です。
因みに『日本書紀』では頭ではなく「腰」から成ったとし、
頭から成ったのは「大山祇」(おおやまつみ)であるとしています。
    - 正鹿山津見神をお祀りする神社 -
  • 七王子神社(岐阜県不破郡垂井町)
  • 坂祝神社 (岐阜県加茂郡坂祝町)
  • 坂益神社 (兵庫県養父市)
 

胸 ➡ 淤縢山津見神おどやまつみのかみ

火之迦具土神の「胸」から成った神です。
」は「泥」、「」は「かがる」
つまり「ほつれ糸などを糸でしっかりとからげる」という意味で、
「泥がしっかりと固まる山の神」という意味ではないかと
推測されています。
 

腹 ➡ 奥山津見神おくやまつみのかみ

火之迦具土神の「腹」から成った神です。
名前の「奥山」で奥深い山を象徴する神と考えられています。
『日本書紀』にこの神の名前は登場しておらず、
胴体から生まれたのは「中山祗」としています。
 

性器 ➡ 闇山津見神くらやまつみのかみ

火之迦具土神の「性器」から成った神です。
くら」が「峡谷」の意とされることから、
「峡谷にまつわる山の神霊」で、
その命名の由来については、
峡谷の水と陰部の小便との連想に基づくとする
説があります。
 

左手 ➡ 志藝山津見神しぎやまつみのかみ

火之迦具土神の「左手」から成った神です。
「志藝」は「茂る」という意味であるということから、
木々がうっそうと生い茂った山を司っている神とする説があります。
また、「志藝」は鳥の「しぎ」であるといった説もあります。
鴫は一般的に首・足・翼が長いため、
長い翼・脚のように伸びた、細長い山の神とか、
あるいは平野部に切れ込む、突き出た稜線部分の神としています。
『日本書紀』では「䨄山祇」と言い、足から化成したと
記述されています。
 

右手 ➡ 羽山津見神はやまつみのかみ

火之迦具土神の「右手」から成った神です。
羽山はやま」は「端山」の意味で「山の麓」に解され、
「腹」から成った神「奥山津見」に対応すると考えられています。
『日本書紀』では「麓山祇」と表記され、まさに「麓」を司る山の神です。
足から化成したと記述されています。
    - 羽山津見神をお祀りする神社 -
  • 熊野大社の境内社・伊邪那美神社
    (島根県松江市八雲町)
 
火之迦具土神の「左足」から成った神です。
「原」を原っぱと解すると、山中の平な場所を司る神となります。
「原」という字が「石」と「泉」から成り立っていることから、
山中に湧き出る「泉」を司る神と解釈することも出来ます。
    - 原山津見神をお祀りする神社 -
  • 道陸神社(大阪府貝塚市)
 

右足 ➡ 戸山津見神とやまつみのかみ

火之迦具土神の「右足」から成った神です。
日本では左右ならば、「左」が優位になりますので、
「右足」というのは実質「一番下」になります。
山の一番下、つまり一番「里に近い」という意味で、
「戸」は山の入り口、つまり山道の入り口という意味。
そこを神格化しているのではないかと思われます。
『古事記』にだけ見え、『日本書紀』には登場していません。