思金神(おもいかねのかみ)

思金神(おもいかねのかみ)は、
「天岩戸開き」や「国譲り」でアドバイスをする、
思慮深く、多くの知恵を持ち、高天原の知恵袋とも言える神です。
高天原を主導する「高御産巣日神」(たかみむすびのかみ)の御子神とされます。
「天孫降臨」の際に、邇邇芸命に随伴して
「五伴緒」(いつとものを)や天手力男神(あめのたぢからお)と伴に
天下りしました。
 
 

どんな神様

 
知恵を司る神
『古事記伝』には
「数人の思慮る智を、一の心に兼持る意なり。」とあり、
人間の智力の極致を神格化したものとされています。
高天原の神々は「思金神」を知恵者として敬っており、
主に、八百万の神が協力して何かを成そうとする時に、
様々な提案をする様子が記紀に書かれています。
 
 
天岩戸開き
「思金神」が知恵者として手腕を発揮する話としては、
何と言っても「天岩戸開き」が有名です。
 
「天照大御神」が天の石屋の戸を開いて中にお籠りになると、
高天原も葦原中国も全て暗闇となり、あらゆる禍が一斉に発生しました。
このような状態となったので、
八百万の神々が天の安河の河原に集まり対応を相談。
そして、「高御産巣日神」(たかみむすびのかみ)の御子神である
「思金神」に善後策を考えさせました。
 
  1. 常世の長鳴鳥(鶏)を集めて鳴かせた。
  2. 鍛冶師の「天津麻羅」(あまつまら)
    鏡の神「伊斯許理度売命」(いしこりどめのみこと)は、
    「八尺鏡」(やたのかがみ)を、
    「玉祖命」(たまのおやのみこと)には、
    「八尺瓊勾玉」(やさかにのまがたま)を作らせた。
  3. 「天児屋命」(あめのこやね)と「布刀玉命」(ふとだま)を呼び、
    天の香具山の牡鹿の肩骨を抜き取り、
    天の香具山の波迦の木(ははかのき)を取り、
    鹿の骨を灼いて占い(太占)をさせ、神意を待ち伺わせた。
  4. 天の香具山の枝葉の繁った「賢木」(さかき)を根ごと掘り起こし、
    上の枝に「八尺瓊勾玉」(やさかにのまがたま)を、
    中の枝には「八尺鏡」(やたのかがみ)を、
    下の枝に楮の白い布帛と麻の青い布帛を垂れかけて、
    「布刀玉命」がこれを「御幣」として奉げ持ち、
    「天児屋命」が「祝詞」を唱え、
    「天手力男神」(あめのたぢからを)が岩戸の脇に隠れて立った。
  5. ここで「天宇受賣命」(あめのうずめのみこと)が登場し、
    岩戸の前に桶を伏せてこれを踏み鳴らすと神憑りし、
    胸をさらけ出して裳の紐を陰部まで押下げて踊った。
  6. 高天原中に轟くように八百万の神が一斉に笑い出したのを聞き、「天照大御神」は不思議に思われ、天岩戸の扉を少し開け、
    「自分が岩戸に篭って闇になっているのに、
    なぜ、「天宇受賣命」は楽しそうに舞い、八百万の神は笑っているのか」と問うた。
  7. 「天宇受賣命」は「貴方様より貴い神が現れたので、
     喜び笑って歌舞しております」と申し上げ、
    「天児屋命」と「布刀玉命」は
    「天照大御神」に「八咫鏡」を差し出した。
  8. 鏡に写る自分の姿をその貴い神だと思った「天照大御神」は、
    いよいよ不思議にお思いになって、
    その姿をもっとよく見ようと岩戸を更に開けると、
    隠れていた「天手力男神」が「天照大御神」の御手を取って
    岩戸の外へ引き出し申した。
    そして直ちに「布刀玉命」が「注連縄」を岩戸の入口に張り、「もうこれより中に入らないで下さい」と申し上げた。
 
こうして天照大御神がお出ましになると、
高天原も葦原中国も自然に太陽が照り、明るくなったのでした。
 
 
国譲り
「国譲り」の際、高御産巣日神と天照大御神が
八百万の神々にどの神を派遣すべきかと問うと、
八百万の神々と思金神が相談して、 次々と使者を派遣しました。
 
天之菩卑能命(あめのほひのみこと)
誓約で二番目に生まれた男神。
使者として地上に降りましたが、
逆に大国主神に取り込まれて、3年経っても復命しませんでした。
 
天若日子(あめのわかひこ)
天之菩卑能命に続いて、弓と矢を授けられて地上へ降りますが、
大国主神の娘・下照比売(したてるひめ)と結婚し、
葦原中国を得ようと企んで、8年経っても復命しませんでした。
 
雉名鳴女(きぎしのななきめ)
天若日子が戻ってこないため、様子を見るために遣わされますが、
天若日子に射殺されてしまいます。
その矢は雉を抜いて、
高天原の天照大御神や高御産巣日神のところまで届きました。
高御産巣日神がその矢を投げ返すと天若日子の胸に刺さり、
死んでしまいました。
 
建御雷之男神(たけみかづちのお)
建御雷之男神(たけみかずちのおのかみ)を派遣するしかないということになり、
大国主神に「国譲り」を迫りました。
 
八重事代主神(やえことしろむしのかみ)・建御名方神(たけみなかたのかみ)
二柱の御子神が同意したことから、大国主神も遂に「国譲り」を受け入れ、
今度は国譲りに成功する。
 
天孫降臨
天照大御神の天孫の邇邇芸命(ににぎのみこと)
地上界を統治するために天下りする際、
思金神と天手力男、天石門別神(あまのいはとわけ)の三柱は
天照大御神は「三種の神器」となる
「八尺の勾玉」「八咫鏡」「草薙剣」を授け、
鏡を自分自身だと思って、地上でも祀るように命じました。
他にも、「五伴緒」(いつとものを)と呼ばれる五柱の神々も
一緒に天下りしました。
いずれも天の岩戸で活躍した神々です。
 
<五伴緒(いつとものを)
  • 天児屋根命  (あめのこやね):天岩戸で祝詞を奏上した祝詞の神
  • 布刀玉命   (ふとだま)  :天岩戸で鏡を掲げた祭祀の神
  • 天宇受賣命  (あめのうずめ):天岩戸で踊りを披露した芸能の女神
  • 伊斯許理度売命(いしこりどめ):天岩戸で八咫鏡を製作した神
  • 玉祖命    (たまのおや) :天岩戸で八尺瓊勾玉を製作した神
 
<三種の神器の警備役的副神>
  • 天手力男神(あめのたぢからお):天岩戸で岩戸を蹴散らし、
                 天照大御神を救出した腕力の神
  • 思金神  (おもいかねのかみ):天岩戸などで助言を呈した智恵の神
  • 天石門別神(あまのいはとわけ):天岩戸の管理をしていた門番を司る神
 
手斧初(ちょうなはじめ)の儀式の主祭神
思金神の「金」(かね)は、
大工道具の最も大切な道具である
「曲尺、矩尺」(かねじゃく)の「カネ」に通じることから、
大工が家を建築する時に最初に行う
「手斧初」(ちょうなはじめ)の儀式の主祭神ともされています。
 
「手斧初」(ちょうなはじめ)の儀式とは・・
建前にかかる初の日に、
正面を南向きにして頭柱を立て、
柱の正面に「天思兼命」 (あめのおもおいかねのみこと)と書き、
右側に  「手置帆乃神」(たおきほおいのみこと)
左側に  「彦狭命」  (ひこさしりのみこと)と記します。
更に裏面に年月日・建主名を墨で書くという儀式のことです。
 
 

名前

 
「思兼神」とか「思金神」と書くのが一般的で、
漢字の意味の通り、
「”思”慮深い」または「優れた”思“考力」を”兼“ね備えた神様です。
 
「常世思金神」の「常世」(とこよ)は、
古代日本人が思い描く、
海の遥か彼方にある住人が不老不死の理想郷のことです。
死者が行く永遠の世界とされています。
思兼神は常世の国からやってきた神様であるという説があります。
 
「八意思兼神」の「八意」(やごころ)
「多くの知恵」という意味であり、「立場を変えて思い考える」、
「注意深く八方に配慮が行き届く」ことも意味します。
 
  • 常世思金神(とこよのおもいかねのかみ)『古事記』『先代旧事本紀』
  • 思兼神  (おもいかね)       『日本書紀』『先代旧事本紀』
  • 八意思兼神(やごころおもいかねのかみ)『先代旧事本紀』
  • 八意思金神(やごころおもいかねのかみ)『先代旧事本紀』
  • 天八意思兼命
  • 阿智彦(あちひこ)
  • 信之阿智祝(しなのあちほうり)
 
 

神格

  • 知恵の神
  • 学問の神
 
 

御利益

  • 学業成就
  • 試験合格
  • 技芸成就
  • 木工・金工職人守護
  • 出世開運
  • 家内安全
  • 商売繫盛
  • 開運招福 など
 
 

系図・関連する神

  • 父:高御産巣日神(たかみむすびのかみ)
  • 妹:萬幡豊秋津師比売命(よろづはたとよあきつしひめのみこと)
  • 子:天表春命(あめのうわはるのみこと)・天下春命(あめのしたはるのみこと)
 
 

祀られている神社

  • 秩父神社  (埼玉県秩父市)
  • 戸隠神社  (長野県長野市戸隠)
  • 阿智神社  (長野県下伊那郡阿智村智里)
  • 安布知神社 (長野県下伊那郡阿智村)
  • 思金神社  (神奈川県横浜市)
  • 八意思兼神社(神奈川県伊勢原市)
  • 五字神社  (大阪府箕面市粟生間谷)
  • 五字神社  (大阪府箕面市粟生外院)
  • 津門神社  (兵庫県西宮市)
  • 氷川神社 境内社-気象神社(東京都杉並区)
 

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