春の女神「佐保姫」

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 「佐保姫」(さほひめ)
奈良の東にある佐保山や佐保川の女神で、
日本の春を司る女神です。
 
「佐保姫」(さおひめ)は、
霞の衣を織り、柳の糸を染め、
花を咲かせる女神と言われています。
そして山々の裾野にうっすらと広がる「春霞」のことを
「佐保姫」(さおひめ)が纏う、白く柔らかな着物の裾に例えました。
 
 
佐保山は古くから桜の名所として知られ、
その佐保山には春を司る神霊が宿っていると考えられ、
そのことからも
「佐保姫」(さおひめ)が信仰されるようになりました。
 
 
日本には、四季それぞれを司る女神様がいらっしゃいます。
春の「佐保姫」、夏の「筒姫」、
秋の「竜田姫」、冬の「宇津田姫」です。
 
<四季を司る女神>
🌸 春 ― 佐保姫 (さほひめ)
平城京の東にある佐保山の神霊。
桜の名所である佐保山の神霊である佐保姫が
春の女神となりました。
 
🍸 夏 ― 筒姫 (つつひめ)
筒姫の「筒」は井戸から生じた名前。
筒姫とは、水の恵みを具現化した神様であると
伝えられています。
 
🍂 秋 ― 竜田姫 (たつたひめ)
平城京の西に位置する竜田山の神霊。
竜田山は紅葉の名所でもあったところから
竜田姫が秋の女神となります
 
☃ 冬 ― 宇津田姫 (うつたひめ)
黒姫や白姫(しらひめ)とも言い伝えられています。
黒は五行説の玄(黒)から、
白姫は雪の白をイメージしたものと考えられます。
 
 
春の女神「佐保姫」(さほひめ)は、
竜田山の神霊で風神であった
秋の女神「竜田姫」(たつたひめ)
対を成すと考えられています。
 
「佐保姫」(さほひめ)は春の野山を彩る女神、
「竜田姫」(たつたひめ)は秋の草木を染める女神です。
 
「竜田姫」(たつたひめ)
竜田山の紅葉に見立てた裁縫や染物を得意とする
女神として知られています。
同様に、佐保山の春霞は絹の薄衣をイメージさせる
「佐保姫」(さほひめ)もまた
織物が上手な女神であると考えられています。
 
古来、竜田山の見事な紅葉は竜田姫が染め上げ、
佐保山の春霞は佐保姫が織り出すと
和歌にも謳われています。
 
佐保姫の霞の衣ぬきをうすみ花の錦をたちやかさねむ
                   (後鳥羽院)
 

<竹久夢二>復刻 屏風「榛名山賦」
 背景の山は早春の「榛名山」、その前に立つ女性は春の女神「佐保姫」