古事記
天忍穂耳命の天降り
大国主神が国造りを完成させた頃、
高天原の天照大御神は、
「豊葦原之千秋長五百秋之水穂 は、
我が子である天忍穂耳命 が知らす（治める）べき国である」
とおっしゃって、
ところが、天忍穂耳命 は天浮橋 に立って地上を覗いてみると、
葦原中国はひどく騒がしい。
引き返してそのことを天照大御神に申し上げました。
天之菩卑能命の派遣
そこで、高御産巣日神 が天照大御神の詔に従って、
そして軍師である思兼神 に問いました。
「天照大御神は葦原中国は大御神の御子が治めるべき国であると
仰せである。
しかし、その国には荒ぶる国津神が多くいるようだ。
さて、どの神を遣わして説得させたらよいと考えるか。答えよ。」
「天菩比神 を遣わしましょう」と申し上げました。
そこで、天忍穂耳命 の弟神「天菩比神 」を地上に遣わしましたが、
大国主神に懐柔されて、三年経っても報告もなく、戻りませんでした。
天之菩卑能命の御子神・大背飯三熊之大人の派遣
改めて八百万の神々を天安河原に集めて協議をさせました。
そして今度は、天菩比神 の子の「大背飯三熊之大人 」を派遣しますが、
父神同様、そのまま出雲に留まりました。
天若日子の派遣
次に、天津国玉神 の子の「天若日子 」に
「天之麻迦古弓 」と「天之波矢 」を授けて派遣しましたが、
葦原中国を我が物にしようと企み、
８年経っても何一つ報告を寄こしませんでした。
雉の鳴女
天照大御神と高御産巣日神 が新たに八百万の神々に協議させると、
そこで雉の鳴女 は天から降り、
天照大御神の言葉の通り正確に伝えました。
この鳥の声言葉を聞いた天佐具賣 が天若日子 に言いました。
「この鳥の鳴き声はとても不吉ですから、射殺して下さい。」
「天之麻迦古弓 」と「天之波矢 」で鳴女 を射殺してしまいました。
天若日子の死
その矢は鳴女 の胸を貫いて天上まで上がり、
天安河原におられた天照大御神と高木神（高御産巣日神 ）の所にまで
届きました。
高木神がその矢を取って見てみると、血が矢羽に着いていました。
「この矢は天若日子 に授けた矢ではないか」と仰せられ、
その矢を高々と差し上げて神々に見せ、誓約をしました。
「もしも天若日子 が勅命に背かず、
悪い神を射た矢がここに届いたのであれば、
この矢よ、天若日子 に当たるな。
もしも邪心があるのであれば、
この矢よ、天若日子 に当たり、その命を奪え・・・」
言うが早いか、その矢を矢が開けた穴から下に投げ返されました。
すると矢は、麻の床で寝ていた天若日子 の盛り上がった胸に当たり、
壊された喪屋
悲しみを共にしようと地上に降りて、
葬儀のため喪屋を建て、八日八夜の殯 をしました。
雀は米を作る係、雉は哭女 として働きました。
大国主の子で下照比売 の兄･阿遅志貴高日子根神 も弔問に訪れましたが、
彼が天若日子 に大変よく似ていたため、
「天若日子は生きていた」と言って手足にすがりついてきました。
すると、阿遅志貴高日子根神 は
「汚らわしい死者に見立てるとは何事か」と激怒し、
身に帯びていた剣を抜いて喪屋を切り倒し、足で蹴飛ばしてしまいました。
喪屋が飛ばされた先が、美濃の藍見川 の川上にある「喪山 」という山です。
今の乱暴を働いた神が自分の兄であることを告げました。
