日向三代(ひむかさんだい)2. 火遠理命

 

海幸彦と山幸彦

邇邇芸命は、大山津見神(おおやまつみのかみ)の娘の
木花佐久夜毘売(このはなさくやびめ)と結婚して、
三人の御子を設けました。
長子は火照命 (ほでりのみこと)[海幸彦]といい、
末子は火遠理命(ほおりのみこと)[山幸彦]といいました。
 
ある日のこと、弟の山幸彦が兄の海幸彦に、
二人の互の海と山の道具を交換したいと頼み、
しぶる海幸彦からようやく釣り針を借りることが出来ました。
ところが山幸彦は魚を1匹も釣ることが出来なかった上、
釣り針も失ってしまいました。
山幸彦は「十拳剣」(とつかのつるぎ)を潰して
500本の釣り針を作って償おうとしましたが、
海幸彦は受け取らず、元の釣り針を返すようにと責めました。
 
山幸彦が困り果てて、海辺で嘆き悲しんでいると、
「塩椎神」(しおつちのかみ=潮流の神)が現れて、その理由を尋ねます。
山幸彦が事情を話すと、
塩椎神は「无間勝間之船」(まなしかつまのこぶね)を作り、
そこに山幸彦を乗せると、
「私がこの船を押し流せば、綿津見神(わたつみのかみ)の宮へ行きます。
 その門の近くに、井戸と清浄な桂の木があります。
 その木の上にいれば、
 海上の娘が見つけて解決してくれるでしょう」と予言しました。
 
 

海神宮訪問

海神の宮に着いた山幸彦は、
塩椎神に言われた通り、桂の木の上に登っていると、
海神の娘・豊玉毘売(とよたまびめ)の侍女が
玉器(たまもい)を持って水を汲みに来ました。
山幸彦は侍女に水を求めると、
侍女が玉器に水を汲んで差し出しました。
山幸彦は水は飲まず、
首飾りの玉を解いて口に含み、玉器に吐き入れました。
 
侍女がそのまま豊玉毘売に差し出すと、
豊玉毘売は「門の外に人がいるのですか」と尋ねました。
侍女は「私達の王のように、貴く立派な方が、桂の木の上にいます」
と答えました。
豊玉毘売はご自分で外へ出て、山幸彦を見ると、
一目で気に入ってしまいました。
そこで御殿に帰って、
「門前にご立派な方がおられます」と父の海神に申し出ました。
それを聞いた海神は自ら外に出て、山幸彦を見ると、
「この方は高貴な天孫の御子だ」と仰せられて丁重にもてなし、
娘の豊玉毘売と結婚させると、
山幸彦はそのまま3年間、海神の宮に滞在しました。
 
ところがある時、
山幸彦はふと自分がここにいる理由を思い出して、
大きな溜息をつきました。
海神は心配になって、溜息の訳を尋ねました。
山幸彦は
海幸彦が失くした釣り針を返すよう攻め立てた有様を話しました。
 

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綿津見神(海神)は早速、海に暮らす大小の魚を悉く集め、
失くした釣り針のありかを尋ねました。
すると魚達は、
「この頃、赤鯛が喉に骨が刺さってモノが食べられないと愁いています」と
申し上げました。
海神は赤鯛の喉から海幸彦の釣り針を見つけ出すと、
海水を自由に操ることの出来る
「塩盈珠」(しおみつたま)と「塩乾珠」(しおふるたま)
授けると、山幸彦に釣り針を返す時に唱える呪文を教えました。
「『この釣り針は
  淤煩鉤(おぼぢ)、須須鉤(すすぢ)、貧鉤(まぢち)、宇流鉤(うるち)
 と唱えながら、後ろ手に渡しなさい。
 また、兄上が高地に田を作ったらあなた様は低地に、
 低地に田を作ったらあなた様は高地に作りなさい。
 私は作物の出来をコントロールすることの出来る水神です。
 3年間で兄上は貧しくなるでしょう。
 その時、あなた様を恨んで攻めてきたら、
 「塩盈珠」(しおみつたま)を出して溺れさせ、
 苦しんで助けを求めたら、
 「塩乾珠」(しおふるたま)を出して生かしなさい。」
それからワニを呼び集め、一尋和邇(ひとひろわに)に送らせました。
 
 

海幸彦(火照命)の服従

山幸彦は海神に教えられた通りの呪文を唱えながら、
釣り針を兄に渡しました。
兄の海幸彦は、海神の予言通り数年で貧しくなり、
山幸彦を攻めてきました。
山幸彦はまた海神の教え通りに、
「塩盈珠」(しおみつたま)を出して溺れさせ、
助けを求めてきたところで
「塩乾珠」(しおふるたま)を出して助けてあげました。
 
海幸彦は最後に頭を下げ、
「これから後は、あなた様の守護人として昼夜仕えましょう」
と申し上げたそうです。
 

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