手水舎(てみずや)

神社の参道を進むと
本殿を囲む瑞垣(みずがき)や神門(しんぜん)の手前に
必ず手や口を洗い清めるための「手水舎」(てみずや)があります。
 

 
神社を参拝する際には手や口を清める風習があり、
これを「手水」(てみず、または、ちょうず)と呼びます。
そして「手水舎」は、手水を行う建物のことです。
 
本来であれば、
全身に水をかぶって禊ぎ(みそぎ)を行うところでなのですが、
「手水」はこれを最大限簡略化したものです。
伊勢神宮では五十鈴川で手水を行いますが、
そのように境内の湧水や小川で浄めるのが本来の姿です。
 
「手水舎」の読み方は様々です。
神社本庁は「てみずや」、大國魂神社は「てみずしゃ」、
「ちょうずや」「ちょうずしゃ」と呼ぶところもあります。
また、手水舎は
「水盤舎」(すいばんしゃ)や「御水屋」(おみずや)
呼ばれることもあります。
場所や地域によっては表記の仕方が変わることもあります。
 
 

手水舎(てみずや/てみずしゃ)

「手水舎」には、
中央の部分に水を湛えた桶の「水盤」が設けられ、
柄杓が置かれています。
龍の口から水が流れ出る「手水舎」は、
龍が水を司る神様として崇められていたことが由来とされています。
龍以外に、ウサギや亀のモチーフが使われていることもあります。
「手水舎」に取り入れられたモチーフにより、
神社の特色を伺い知ることが出来ます。
 
 

手水舎の起源

古代、人が集まる場所といえば神社でした。
神社にお詣りする時に口をすすぎ、手を洗うことは、
お清めの意味がありますが、
昔は近くの川で身体を清めてからお詣りしたと言います。
 
第十代崇神天皇の御代(3世紀中頃~4世紀前半・古墳時代)、
渡来者の急増による治安の乱れや疫病の蔓延により、
人口が半減するという事態が起こりました。
そこで崇神天皇は
神社に「手水舎」をつくり、手洗いや口をゆすぐことを推奨しました。
このことから、食前やトイレの後にも、手を洗う習慣が出来ました。
これも2500年前から続く日本の習慣です。
 
 

「手水」の作法

ここでは「手水」の基本的な作法と注意点を紹介します。
手水は、形式的に手や口をすすぐのではなく、
心の中にある、日頃のわだかまりやモヤモヤも
洗い清めるつもりで行いましょう。
私達の穢れを祓って下さるのはあくまでも神様ですが、
その神の前に出るための最低限のマナー、心構えです。
 
 
1.心を落ち着かせる
心身を清めることが、手水の主な目的です。
そのためには、心の平静を保つことが大切です。
邪念を払い、落ち着いた気持ちになれたら軽く一礼をします。
 
 
2.右手で柄杓を持って左手を清める
まずは右手で柄杓を持ち、水を汲みます。
そのまま左手に水をかけて清めます。
柄杓には、たっぷりと満杯になる程度まで水を入れて下さい。
柄杓の水はこの後も使うため、
全てを左手にかけないように注意が必要です。
3割くらいの量を目安に使うようにします。
 
何故、左が先?
伊邪那岐大神(いざなぎのみこと)の左目から生まれたのが
天照大神でその子孫が神武天皇だからということです。
 
 
3.左手で柄杓を持って右手を清める
続いて、柄杓を左手に持ち替えます。
この時、水をこぼさないように気を付けましょう。
持ち替えたら、
左手と同様に3割くらいの水を使って右手を清めます。
 
 
4.右手で柄杓を持って口を清める
両手を清めたら、
柄杓を右手に持ち替え、左手に水を注ぎ、口をすすぎます。
衛生面が気になる場合は口をすすぐ真似をします。
この時、柄杓の水は、少し残しておくのがポイントです。
 
口を清める時に、
柄杓に直接口をつける人がいますが、
これはマナー違反!
衛生的にも良くないので、
必ず手に水を注いで口を清めて下さい。
また、口に含んだ水を水盤に戻すのもNGです。
水盤は多くの人が使用するため、
唾液などが含まれた水を戻すのは不衛生です。
排水溝や、水盤の外側に出すようにします。
 
5.両手で柄杓を持って持ち手部分を清める
口と両手を清めたら、使用した柄杓の柄を清めます。
両手で立てるように持ち、
柄杓の中に残っていた水を柄に流して下さい。
この時、勢いよく柄杓を立てると
衣服が水で濡れる場合がありますので、
なるべくゆっくり立てて、
水しぶきを立てないようにするのがコツです。
清め終わったら柄杓を元の場所に戻し、
軽く一礼をしてから離れます。
 
 
6.手水が終わった後
手水の後にハンカチなどで手を拭くか否かは、
人それぞれ考え方が異なります。
衛生面や、濡れた手で
神社のものを触って汚さないようにするという意味で、
拭いた方が良い場合があります。
はっきりと「ハンカチNG」とされていない限りは、
手を拭きましょう。
手水を終えたら、
髪や顔など余計な部分を触らないようにすることも大切です。
せっかく清めた手が再び汚れてしまいます。
また、トイレに行った場合は改めて手水舎で清めると良いです。
 
 

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