文部省唱歌「茶つみ」

立春を第1日として、そこから数えて88日目を
八十八夜」と言います。

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この「八十八夜」の日に摘んだお茶を飲むと、
その一年間、健康に過ごせると言われています。
八十八夜」と言えば「茶摘み」という
イメージが定着したのは、
文部省唱歌『茶つみ』がきっかけと言われています。
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1.夏も近づく八十八
  野にも山にも若葉が茂る
  あれに見えるは茶摘みじゃないか
  あかねだすきに菅の笠
 
2.日和続きの今日このごろを
  心のどかに摘みつつ歌う
  摘めよ 摘め摘め 摘まねばならぬ
  摘まにゃ日本の茶にならぬ
 
『茶つみ』は、明治45(1912)年に刊行された
『尋常小学唱歌(三)』に初めて掲載されました。
作詞作曲ともに不詳です。
オリジナルの曲名は「茶摘」なのですが、
「摘」という漢字は小学校で教えないので
教科書では「茶つみ」と表記されています。

    

この『茶摘』は、京都の宇治田原に伝わる
「茶摘み歌」を基にして作られたという説が
あります。
宇治田原の「茶摘み歌」は、
茶摘みや製茶に関することを歌っています。
ああお茶がありゃこそ
湯谷のみやこ よいしょ
お茶がなければ いやの谷
 
ああお茶を摘むなら
湯谷へござれ よいしょ
煎茶元祖の お茶を摘む
 
おおお茶を摘むなら
すそから摘みやれ よいしょ
 
ああ かたい約束
茶園の中で よいしょ
お茶が切れても 縁切れん
 
ああ、お茶の摘みちん
さきまわりしても よいしょ
とれた主さんにゃ 不自由ささん
 
ああ、今年これきり
また来年の よいしょ
八十八夜の お茶に会う
 
ああ、お茶がすんだら
早うもどれよと よいしょ
言うた親より 殿が待つ
 
ああ、宇治でもうけて
田原でつこて よいしょ
花の朝宮で 丸裸
 
ああ、嫁入りするなら
田原へおいで よいしょ
田原よいとこ 米がある
あら おしゃれは さをおやぁ
 
ああ、暑けりゃ
笠きよう
いろ黒くやけなあ よいしょ
都住まいをさす程に
あら おしゃれは さをおやぁ
 
茶摘みしてては
ようやしなわん よいしょ
あなた ほいろし しておくれ
 
恋しい恋しいと
鳴く蝉よりも よいしょ
鳴かぬほたるが 身を焦がす
 
 
因みに、京都の宇治田原は、
江戸時代に煎茶製法を確立した
「日本緑茶の祖」と呼ばれる永谷宗円の
誕生の地です。
宗円は、元文3(1738)年に新芽の茶葉を蒸し、
焙炉(ほいろ)と呼ばれる器具の上で
茶葉を手揉み乾燥させる
「青製煎茶製法」をこの地で考案し、
現在の日本緑茶製法の礎を築きました。
 

 
文部省唱歌の『茶つみ』は、平成4(1992)年には、
『うさぎ』『春の小川』『ふじ山』と並んで、
指定されました。
平成19(2017)年には、
日本の歌百選」に選定されています。
 


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