彼岸桜(ひがんざくら)

 
 
桜はバラ科サクラ属(スモモ属)の落葉広葉樹で、
日本では固有種を含む10種の野生種を基本に、
変種を合わせると100種以上の自生種があり、
園芸品種は200種以上、
分類によっては600種以上とも言われています。
 

彼岸桜(ひがんざくら)

 
「彼岸桜」(ひがんざくら)は、
「染井吉野」や「山桜」といった桜が
3月末頃~4月上旬頃に開花を始めるのに対して、
春のお彼岸頃(3月20日前後)に開花します。
 
花は2cmくらいと小さく、
「染井吉野」よりも濃い淡紅色をしています。
桜の中では背が低く、強健で樹齢が長いと
言われています。
 
 
全国的に観賞用として植えられていますが、
本州中部より西の方に多いです。
特に長野県伊那市高遠町に群生していて、
「高遠城址公園」(たかとおじょうしこうえん)
「日本三大桜の名所」であり、
「さくら名所100選」にも選ばれています。
「日本三大桜の名所」
 ・青森県の弘前公園
 ・長野県の高遠城址公園
 ・奈良県の吉野山
 
 
 
高遠城址公園」は、
明治4(1871)年の廃藩置県で城が取り壊された後、
明治8(1875)年に公園公園化が決定しました。
その際、荒れ果てた城址をなんとかしようと
高遠藩の旧藩士達が、城下にあった
「桜の馬場」の桜を移植したのが
公園の桜の始まりです。
 
 
小ぶりながら赤みが濃く華やかで、
昭和初期には「天下第一の桜」と称される
県内屈指の桜スポットになりました。
なお「高遠小彼岸桜」(たかとおこひがんざくら)は、
近年の研究結果から、高遠固有のものとされ、
天然記念物に指定されています。
 

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似た名前の桜に、
寒い時期に赤い花を咲かせる
「緋寒桜」(ひかんざくら)や、
同じくお彼岸の頃に開花する別種の
「江戸彼岸」(えどひがん)があります。
混乱を避けるために「彼岸桜」を
「小彼岸」(こひがん)「小彼岸桜」(こひがんざくら)
と呼ぶこともあります。
 

「緋寒桜」(ひかんざくら)

 
「緋寒桜」(ひかんざくら)とは、
「彼岸桜」とは別種で、
「ひん」と「ひん」が紛らわしいため、
「寒緋桜」(かんひざくら)とも呼ばれています。
 
 
China沿岸部や台湾に自生すため、
別名「台湾桜」とも言われています。
 
旧暦正月頃の1月中から2月初めにかけて
「海棠」(かいどう)に似た
緋色の下向きの花を咲かせることから、
「元日桜」とも呼ばれています。
 
 
「染井吉野」や「山桜」の南限が
鹿児島県であるため、
沖縄県で「花見」の桜と言えば、
「緋寒桜」を指します。
そのため沖縄県や鹿児島県奄美地方での
桜の開花予想及び開花宣言の「標本木」は、
「緋寒桜」が用いられています。
 

江戸彼岸(えどひがん)

彼岸の時期に咲く「江戸彼岸」(えどひがん)は、
日本の桜の、僅か10種程の野生種の一つで、「染井吉野」のもとになった桜の一つです。
花は他の桜と比べると小さくピンク色で、
一重咲きで、葉は楕円形をしています。
 
 
前述の「小彼岸桜」(こひがん)は、
「江戸彼岸」と「豆桜」(まめざくら)
交雑種と言われています。
「小彼岸桜」が低木であるのに対し、
「江戸彼岸」は桜の中で最も寿命が長く、
大きく生長する特徴があり、
30mを超える巨木になることもあります。
樹齢千年を超えると伝わる古木、名木の中には
天然記念物に指定されるものもあります。
 
 
「日本の三大桜」のうち、
山梨県北杜市の「山高神代桜やまたかじんだいざくら」と、
岐阜県本巣市の「根尾谷淡墨桜ねおだにうすずみざくら」は
江戸彼岸です。
もう一つの福島県田村郡の「三春滝桜みはるたきざくら」は、
ベニシダレザクラですが、
こちらも江戸彼岸の系統です。
 
 
他にも、岩手県盛岡市の「盛岡石割桜」、
福島県大玉村の「馬場桜」、
埼玉県北本市の「石戸蒲桜」、
岡山県真庭市の「醍醐桜」などの
いずれも品種は「江戸彼岸」です。
 
また西行が奥州行脚の折に、
「盛りには などか若葉は今とても
 こころひかるる糸桜かな」と詠んだ
江戸彼岸の変種の枝垂れ桜の「西行桜」は、
栃木県大田原市にあります。