桜餅(さくらもち)

「桜餅」とは、
小麦粉やもち米から作られた生地で
小豆あんをくるみ、塩漬けした桜の葉で包んだ
和菓子です。
鮮やかでキレイな桜色でいい香りのする、
春の季節には欠かせない和菓子ですね。
 
 

桜餅(さくらもち)とは

桜の開花の時期に、よく見かける「桜餅」。
「桜餅」とは、文字通り
「桜」を連想させて作られたお菓子で、
淡いピンク色の餅を
塩漬けした桜の葉で包んだもので、
特有の香りがします。
雛菓子の一つであり、
春の季語としても知られています。
 
「桜餅」と言えば、
関東風(江戸風)の「長命寺」と、
上方風の「道明寺」の2種類が有名ですね。
 
「関東風」は、
小麦粉を溶いて薄く焼いた皮で
小豆の漉し餡を包み、
その上から塩漬けの桜の葉を巻いています。
一方「関西風」は、
道明寺粉を蒸して作った粒身を残した餅に
小豆の漉し餡を詰めて、
塩漬けの桜の葉を巻いています。
いずれも「小豆餡」に「桜色の皮」や「餅」、
「塩漬けの葉」というのが特徴です。
 
関東風「長命寺桜餅」
 
関東風の桜餅は、
小麦粉などの生地を焼いた皮で餡を巻いた、
クレープ状のお餅です。
 
薄力粉や白玉粉などを使った生地なので、
食感はモチっとしたお饅頭やどら焼きのような感覚です。
生地の作り方自体は、
クレープやパンケーキのように
粉を混ぜ合わせていくだけなので、
意外と簡単に作れます。
 
「関東風桜餅」は、別名「長命寺桜餅ちょうめいじさくらもち」とも
呼ばれています。
向島「長命寺」の門前にある
山本屋」が考案した「桜餅」です。
 
長命寺
三代将軍家光が鷹狩りに来た際に腹痛を起こし、
般若水(井戸水)で薬を飲んだところ
治まったところから、「長命寺」と改号されました。
 ・住所:〒131-0033
     東京都墨田区向島5丁目4−4
 
 
山本屋」の初代・山本新六は、
元禄(1688~1704)の初めに
銚子から江戸に出て来て
長命寺」の門番になりました。
新六は、隅田川の落ち葉掃除で
大量に集まる桜の葉を見て、
この桜の落ちた葉を集めて
醤油樽で塩漬けにして、
お餅に巻きつけた「桜餅」を考案し、
享保2(1717)年より、向島の名跡「長命寺」の
門前にて売り始めました。
元々は墓参りに来た人々をもてなす為の
お菓子として用意したという説もある
そうです。
 

 
この頃、八代将軍・吉宗の命令により、
隅田川沿いに桜の木が植えられると、
春の桜の美しさから
花見の時期に人々が沢山集まり、
賑わうようになりました。
その場所に店を出していた
山本新六の「山本屋」も繁盛しました。
山本屋」の「桜餅」は、300年を超えて
今も変わらぬ素材と製法で作られ、
隅田川の花見土産の定番となっています。
 
なお、最初から小麦粉生地ではなかったようで、
文政13(1830)年刊行の
『嬉遊笑覧』(きゆうしょうらん) により、
「しんこ餅」から「葛粉を使用した餅」に
変わった時期があったことが分かります
 
関西風「道明寺桜餅」
 
関西風の「道明寺」は、
道明寺粉で皮を作り
桜の葉で包んだまんじゅう状のお餅です。
道明寺粉の粒々した食感が特徴で、
「道明寺」とか「道明寺餅」、
または京都の和菓子店などで
よく売られているので、
「京風桜餅」と呼ばれることもあります。
 
道明寺の桜餅は、天保期 (1830-44) に
江戸で人気の長命寺桜餅を参考に発案され、
大阪の北堀江 (きたほりえ) にある「土佐屋」が
販売したのが始まりと言われています。
 
土佐屋では、冬と春は片栗粉の記事を薄く焼き、
夏と秋には吉野葛を使ったものを販売していたようで、桜餅にも色々あったようです。
試行錯誤の末、小麦粉生地と道明寺生地が
定番になったのかもしれません。
 
 
「道明寺粉」とは、
水に浸したもち米を蒸して乾燥させた後、
目の粗い石臼ですり潰して作られたものです。
粒々とした食感が大きな特徴のひとつです。
粒が小さい順に、6割、5割、4割、3割などの
種類があり、粒が細かいほど、
加熱すると餅に近い滑らかな状態になります。
 
道明寺」とは、大阪に実在するお寺の名前で
その「道明寺」で初めて作られたことから
「道明寺粉」と言われるようになったそう
です。
 
道明寺
道明寺」は7世紀中葉に土師氏の氏寺として
建立された土師寺を起源とした尼寺です。
その土師氏の後裔である菅原道真公が
信心を込めて、手ずから刻まれた
国宝十一面観世音菩薩像を御本尊とする
古義真言宗の尼寺です。
道明寺糒(ほしい)の起源は、
菅原道真公の伯母上がこの寺に住んで居られ、
道真公が築紫に左遷された後、毎日、
伯母の覚寿尼が九州に向ってお供へされたご飯の
お下がりをいただくと病気が治るというのが
評判となり希望者が多くなったため、予め乾燥・
貯蔵するようになったのが始まりと言われています。
 ・住所:〒583-0012
     大阪府藤井寺市道明寺1-14-3
 

桜餅の葉っぱは食べても大丈夫?

桜の葉っぱ
 
「桜餅」に使われているのは、
桜の葉を塩漬けにしたものです。
桜と言えば「ソメイヨシノ」が有名ですが、
「桜餅」には、芳香成分が多く含まれ、
葉が大きめで毛が少ない
「オオシマザクラ」が使用されています。
その約9割が伊豆で生産されています。
 
桜餅の香り「クマリン」
毎年収穫した「オオシマザクラ」の葉を
半年ほど塩漬けにすると、
「クマリン」という芳香成分が生まれ、
独特の風味を醸し出します。
 
「クマリン」は桜の葉やシナモンなどにも
含まれる芳香化合物で、
バニラに似た独特の甘い香りを放ちます。
「クマリン」を含む植物としては他にも、
「トンカ」というマメ科の植物があります。
「トンカの種子(トンカビーンズ)」から
抽出される精油は「クマリン」の含有率が高く
フレグランスで桜の香りを再現する際にも、
よく用いられる天然香料です。
 
 
桜餅に葉っぱを巻く理由
桜餅に葉が巻かれているのには、
きちんとした理由があります。
一つは勿論「桜の香りづけ」をするためです。
もう一つは、水分が失われるのを防いで、
「お餅の乾燥を防ぐ」ためです。
どんなに美味しい桜餅でも、
水分が失われてしまうと、
パサパサとして美味しくなくなりますよね。
 
また、塩漬けにした葉を使うことで、
「雑菌の繁殖を防ぐ」他、
「生地の酸化を遅らせてくれる」ことで
美味しさを保ってくれるのです。
 
葉っぱは食べてもいいの⁈
葉を食べる分には問題はありません。
葉をつけたまま食べると葉の食感があり、
風味が強くなるものの、
絶妙なバランスの甘味と塩味を楽しめます。
 
一方、はがして食べると
桜の香りはほのかになるものの、
葉の独特な食感を感じない優しい舌触りと、
桜餅そのものの味わいを満喫出来ます。