餅(もち)

 
古くから日本人は
「餅」をハレの日に欠かさず食べてきました。
餅は、古くから神様に供えるために用いられ、
特に丸い形の餅は神様の魂が宿るとされて
います。
 
お餅は、出産、人生の門出、お祝いなどの
人生の節目に深い関係がある他、
桜餅、菱餅、柏餅、ぼた餅、一升餅などの餅が
様々な日本の行事と深い繋がりを持っています。
 
 

「餅」とは?

「餅」(もち)とは、糯米(もちごめ)を蒸して
臼で搗き潰して種々の形に成形したものです。
粳米(うるちまい)や粟など他の穀物を用いたもの、
米粉をこねて作ったもの、
葛粉など澱粉で作るものも広く「餅」と呼びます。
縁起物として、正月や節句などの行事食として、
更には祝い事にも用いられます。
 
語源
「もち」は古くは「もちい」と呼ばれていました。
平安中期の辞書『和名類聚抄わみょうるいじゅしょう』には、
「毛知比」(もちひ)として「もち」が出てきます。
「もちひ」というのは
「餅飯」という意味だと思われます。
 
元禄10(1697)年刊行された
『本朝食鑑』(ほんちょうしょっかん)には
「餅 毛知(もち)と訓(よ)む」とあり、
その頃には現在のように「もち」と呼ぶように
なっていたと記されています。
 
「餅」(もち) の語源には様々な説があります。
 
① 植物「モチノキ」から採れる「黐」説
「モチノキ」の樹皮から採れる粘着成分
「黐」(もち)を使って、
ガムのように野鳥をくっつけて捕える
「トリモチ」に似ているからと言うものです。
 
② 満月を意味する「望月」説
「望月(満月)」になぞらえた円形の餅を、
祭祀などの供え物にしたことから、
「望月」(もちづき)の「もち」が
「餅」になったというものです。
 
③ 持って出る「持ち飯」(もちいい)
長持ちで持ち歩き出来る保存食・携帯食としての
「持ち」という説です。
 
柳田国男先生は、「餅」は古代日本で
唯一所有を許された食べ物であることから、
「モツ(持つ)」という動詞が
「モチ」という言葉の由来であると言う説を
唱えています。
 
④ 「餅飯」(もちいひ)が略されて「もち」に
「餅飯」(もちいひ)とは、お餅のことです。
その「もちいひ」が「もちひ」に略され、
更に「もち」になったということです。
 
因みに漢字の「餅」は、
中国では小麦粉をこねたものの意味します。
それに似た食べ物ということで、
「もち」の漢字として「餅」が使われるように
なったと言われています。
 
また「餅」は、加工後の食材を表す言葉で、
材料となる米は「糯米」(もちごめ)と表記されます。
 

餅は縁起の良い食べ物

 
現在、「餅」は日常の食べ物となっていますが、元々は、神に供える特別な食べ物でした。
農耕民族として歴史を紡いできた
日本人にとって欠かせない
「稲」が関係しています。
 
「稲」は一粒のもみ殻から発芽し、
無数の籾を結実させます。
そこに日本人は「稲」に対して
神聖な存在を感じ、
特に米粒を凝縮させた「餅」には
新しい生命を更新、再生する力が含まれている
と信じられてきたそうです。
そして「ハレの日」(お祝いのある特別な日)には
餅を食べる習慣が広がったのです。
 
 
紅白餅
「紅白餅」の色には、
新生児を赤ちゃんと呼ぶように
誕生を意味する「赤色」と
死別やお別れを意味する「白色」、
そして2つの色を組み合わせることで、
人の一生を表していると言われています。
 
つまり「紅白餅」には、
「人の一生を円満に過ごす」という
願いが込められていると言えます。
 
丸いお餅「丸餅」
「丸餅」の形は一説には人の魂がこもる
心臓を模したと言われています。
また「角が立たず円満に過ごせますように」と
いう思いが込められていると言われています。
 

餅配(もちくばり)

 
「餅配」(もちくばり)とは、餠を搗いて、
親類・近隣などに配ることを言います。
「歳の暮」や祝い事などの時に行なわれ、
冬の季語になります。
 
贈答になぜ餅が多く用いられてきたのかに
ついては諸説あります。
「同じ火で調理し、それを一緒に食べて
 一体感を得る」ということは
古くから行われてきましたが、
一箇所に集まるのが難しくなってきたため、
同じ時に作った餅を配ることで、
一同に集まり食事をすることの代わりとしたのではないかという説があります。
「餅」は神と人を繋ぐだけでなく、
また人と人とを繋ぐツールでもあるのです。

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