初寅(はつとら)

f:id:linderabella:20200723094554j:plain

 
 
 
 
 

初寅とは

 
「初寅」(はつとら)とは、
その年最初の「寅の日」のことを言います。
この日、福徳成就、商売繁盛、家内安全を願って
「毘沙門天」(びしゃもんてん)に参拝します。
「魔除けの福笹」の授与や「甘酒」の無料接待などがあります。
 
 

信貴山朝護孫子寺

 
奈良県、標高437mの信貴山中腹に建つ
信貴山朝護孫子寺(しぎさんちょうごそんしじ)は、
聖徳太子によって創建され、毘沙門天がお祀りされている寺です。
 

www.sigisan.or.jp

 
今から1400年程前、聖徳太子が物部守屋の討伐の際に、
この山を訪れて戦勝の祈願をすると、
天空に「毘沙門天王」が現れて、必勝の秘法を授けました。
そのご加護で敵を倒した聖徳太子は、
この山を「信ずべき、貴ぶべき山」として信貴山と名付け、
自ら「毘沙門天」を彫刻し伽藍を建て、お祀りするための寺院を
創建しました。
 

 

 
ちょうど毘沙門天が現れたのが
「寅の年」「寅の日」「寅の刻」であったため、
寅が信仰されるようになったのです。
そしてその故事から、
「寅」の縁日に、信貴山の毘沙門様にお参りすると、
聖徳太子にあやかって良いご利益を授かるとして
信仰を集めるようになりました。
 

 
更に、平安中期に信貴山の中興の祖とされる
命蓮上人(みょうれんしょうにん)
醍醐天皇の病気回復を毘沙門天王に祈願すると、
たちまち全快されたことから大変お喜びになり、
朝廟安穏・守護国土・子孫長久の祈願所として
朝護孫子寺(ちょうごそんしじ)の勅号を賜ることとなりました。
 

 
現在では、
「信貴山の毘沙門さん」とか「信貴山寺」などと呼ばれ、
「商売繁盛」「必勝祈願」「金運招福」「合格祈願」など
民信仰の場として広く親しまれています。
 
 
 

毘沙門天について

f:id:linderabella:20201226102512j:plain
 

インドの財宝の神様「クベーラ」

「七福神」や「四天王」として知られている
「毘沙門天」ですが、
その前身はインド神話に登場する「クベーラ」という
財宝の神様と言われています。
 
 
「クベーラ」は、
サンスクリット語では「ヴァイシュラヴァナ」と呼ばれ、
この「ヴァイシュラヴァナ」という音がChinaで訳されて
「毘沙門」となりました。
 
「仏説毘沙門天王功徳教」というお経には
「毘沙門天」の住む天敬城では財宝や福が湧き出しており、
1日に3度も焼き捨てるほどであり、
「毘沙門天」に帰依をすればこの福を授かることが出来ると
説かれています。
 
 

戦いの神様、四天王「多聞天」

帝釈天に仕え、須弥山の中腹で仏法を守護する
「四天王」(持国天・増長天・広目天・多聞天)として祀られる際は
「多聞天」(たもんてん)という名で呼ばれていますが、
これはサンスクリット語「ヴァイシュラヴァナ」が
「よく聞く」という意味をChina語に訳されて
「多聞天」になったと伝えられています。
「多聞天」は「四天王」の神様の中で最も強い神様として描かれ、
仏教が伝来したChinaでは「戦いの神」とされています。

「毘沙門天」は日本にもたらされると、
国家鎮護の神様として信仰をされるようになります。
聖徳太子が建立した「四天王寺」(大阪)は
日本初の勅願寺院です。
 

 
聖徳太子の信仰もあってか、
「毘沙門天」は「戦いの神」として多くの武将に信仰されます。
平安時代に東北の蝦夷を討伐しに行った、
日本最初の征夷大将軍の坂上田村麻呂に、
名将・楠木正成の幼名は
「多聞天」から頂いた多聞丸だったそうです。
 
 
何といっても「毘沙門天」信仰で有名な武将と言えば
上杉謙信です。
自らを「毘沙門天」の生まれ変わりとし、
「毘沙門天」を信仰し、
居城である春日山城には「毘沙門天像」を祀っていました。
 
 

七福神「毘沙門天」

 
「毘沙門天」は朝廷や武将による信仰が広がるだけでなく、
民間でも信仰が広がります。
平安時代には、商売繁盛などの現世利益を授ける神様という側面が
民間に広がっていたとされ、
「毘沙門天王功徳経」というお経に書かれている
「毘沙門天の十種の福」に預かろうということで
信仰が広まりました。
  1. 無尽の福  (尽きることのない福)
  2. 衆人愛敬の福(皆から愛される福)
  3. 智慧の福  (智慧により物事を正しく判断する福)
  4. 長命の福  (長生きする福)
  5. 眷属衆太の福(周囲の信頼に恵まれる福)
  6. 勝運の福  (勝負事に勝つ福)
  7. 田畠能成の福(田畑を豊作に導く福)
  8. 蚕養如意の福(家業が成功する福)
  9. 善識の福  (良い教えを学ぶ福)
  10. 仏果大菩提の福(悟りを得られる福)
 
室町時代頃から広まる日本独自の信仰である「七福神」にも、
「毘沙門天」は早くから名を列していました。
 
 
「七福神」の中でも得られる福の数はトップであり、
この世に存在するほとんどの問題は
「毘沙門天」の福によって解決出来そうですけど。
 
 

北を守護する「十二天」のお一人「毘沙門天」

 
「毘沙門天」は「十二天」のお一人でもあります。
「十二天」とは仏教の護法善神12種の天神の総称で、
各方位に当てられています。
「毘沙門天」は、北の方角を守護する神様です。
  • 東 :帝釈天 (たいしゃくてん)
  • 東南:火 天 (かてん)
  • 南 :焔摩天 (えんまてん)
  • 西南:羅刹天 (らせつてん)
  • 西 :水 天  (すいてん)
  • 西北:風 天 (ふうてん)
  • 北 :毘沙門天(びしゃもんてん)
  • 東北:伊舎那天(いざなてん )