粽(ちまき)・柏餅(かしわもち)

「端午の節句」の代表的な行事食と言えば、
小豆餡や味噌餡などの入った餅を、
柏の葉で包んだ「柏餅」(かしわもち)と、
笹の葉で細長いお団子を包んだ「粽」(ちまき)です。
「柏餅」「粽」のどちらを食べるかは、
地域によって違いがあるようです。
 
 

関東は「柏餅」、関西は「粽」

 
近年は柏餅が全国区になりつつありますが、
そもそもは関東を中心に「柏餅」が、
関西を中心に「粽」が食べられてきました。
 
関東で「ちまき」と言えば、
おこわを竹皮で三角形に包んだ、
いわゆる「中華ちまき」のことを指すのが一般的ですが、
特に端午の節句に食べる習慣はないようです。
関西で端午の節句に食べられる「粽」は、
笹の葉にほんのり甘いお団子を包んだ
細長い和菓子のことです。
 
 

「粽」(ちまき)

 
「粽」はChinaが起源だと言われています。
Chinaでは古来、「粽」は水神への捧げものでした。
 
今からおよそ2300年前、
屈原(くつげん)という詩人がいました。
屈原は国王の側近として仕え、
その正義感と国を思う強さで
人々から大変慕われていましたが、
陰謀によって失脚し、
国を追われてしまいました。
国の行く末に失望した屈源は、
汨羅(べきら)という川に身を投げてしまったそうです。
その日が5月5日だと言われいます。
 
屈原の死を悲しみ、
川に沈んだ屈源が
魚に食べられてしまわないよう、
供物を投げ入れて弔いをしていましたが、
悪い龍に盗まれてしまうばかり。
 
そこで、龍が苦手にしている
楝樹(れんじゅ)の葉で餅米を包み、
邪気を払う
五色(赤・青・黄・白・黒)の糸で縛ってから
川へ流すようにしたところ、
無事に屈原のもとへ届くようになったと
言われています。
これが「粽」の始まりとなり、
「端午の節句」の風習とともに、
「粽」も日本に伝来したのです。
 
 
「粽」とは本来、
「茅萱=棟樹」(ちがや)で巻いた餅のことです。
「茅萱」には呪力があると考えられ、
魔除けに使われてきました。
「茅萱の葉」を用いて作られたことから
「ちがやまき」と呼ばれ、それが短縮されて
「ちまき」と呼ばれるようになりました。

また、「粽」に結んだ赤・青・黄・白・黒の
五色の糸は、
子供が無事に育つよう魔除けの意味を込め、
鯉のぼりの吹流しの色などに反映されています。
 

 
 

柏餅(かしわもち)

 
「柏餅」は日本発祥です。
「柏餅」が端午の節句に登場するのは、
「粽」よりかなり後の江戸時代です。
 

 
柏の木は昔から神聖な木とされていたことや、
柏の葉は新芽が出るまで
古い葉が落ちないことから、
「子供が生まれるまでは親は死なない」、
すなわち
「跡継ぎが途絶えない」「子孫繁栄」に結び付き、
「端午の節句」の縁起の良い食べ物となって、
江戸を中心に広がりました。
 

 
因みに、「柏餅」には
柏の葉を「外表」に巻いているものと、
裏を外向けた「中表」に巻いているものが
あります。
これは小豆あんの時は「外表」に、
味噌あんなら「中表」に巻くといったように、
中身の違いを表しているそうです。

 
また、柏が手に入りにくい西の地方では、
丸い形をした「サルトリイバラ」の葉が
使われることが多いようです。
 

 
柏餅の葉っぱは食べられるのか
柏餅の葉っぱは、基本的に食用ではないので食べることは推奨されていません。直接、柏餅を巻いているものなので食べても害はありませんが、独特の苦味と筋っぽさがあるため、餅やあんこの食感、味わいを損なう恐れがあります。もともとは保存容器がなかった頃に、その丈夫さから皿や保存の目的として使われていたといわれ、食用ではありませんでした。
 
柏餅の葉っぱの種類
使われている葉っぱは、柏餅が作られる地域によって異なります。
関東地方や中部地方より北の地域では、柏の葉っぱが使われることが多くなっています。柏の葉っぱは兜の形に似ていることから、端午の節句にふさわしいといわれるようになりました。柏は秋になっても落葉せず、年を越しても新しい芽が出るまで葉が落ちないという独特の習性から、子孫繁栄を願う縁起物として扱われています。また、縁起のよいことから「三つ柏」や「抱き柏」といった家紋にも利用されています。
サルトリイバラ
関西地方では柏の葉っぱではなく、サルトリイバラという植物の葉っぱが柏餅に使用されることが多くなっています。サルトリイバラの葉っぱの形は、楕円または丸型で、先が短く尖っているのが特徴です。また、香りもよく餅を包むのに適した大きさです。
柏餅に葉っぱを巻く意味
柏餅に葉っぱを巻くのには、いくつか理由があります。
殺菌作用
柏の葉っぱには「オイゲノール」という殺菌作用のある成分が含まれているのが特徴です。菌の繁殖を防ぐ効果があり、餅が傷むのを防ぐことができるため、昔の人は柏の葉を巻いたといわれています。
保湿作用
柏餅に巻かれている葉っぱには、餅の乾燥を防ぐという目的もあります。餅は乾燥してしまうと表面がかたくなり、食感が悪くなってしまうため、乾燥から守るラップなどがない時代に天然のもので保湿をしていました。
香りづけ
餅に香りをつけるのも、葉っぱを巻いている理由のひとつです。葉っぱを巻いてから蒸すことで餅に香りが移り、口に入れた瞬間に風味が広がります。
食べやすさ
餅を手に持って食べやすくするためというのも、葉っぱが巻かれている理由です。直接、手で食べるとべたべたとくっついてしまいますが、葉っぱで包まれていることによって手を汚さずに食べることができます。

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