土鈴(どれい)

「土鈴」(どれい)は、
縄文時代から粘土を焼いて作られているほど
歴史の古い縁起物です。
いつの頃からそうなったかは定かではありませんが、
「厄除け」とか「魔除け」のお守りとされてきました。
 
 

「土鈴」とは

 
「鈴」は、土器や金属、陶器などで出来た
中が空洞の外身の中に小さな玉が入っていて、
全体を振り動かすことで音を出すものです。
 
縄文時代に、クルミなどの木の実や豆を振ると
外殻や鞘の中で種子が動いて鳴ることに着想を得て
作られた道具とも言われています。
 
人間がいつから「鈴」を用いているのかは、定かではありませんが、
古くから人間の暮らしに深く関わってきました。
 
音を出す道具は、獣や魔物を追い払って生命を守るものであり、
同時に家畜などを呼び寄せたりするものでした。
農耕が始まってからは、
農作物を荒らす動物を追い払うために鳴子を田畑に設置したり、
今でも山菜採りなどで山に入る時には、
熊除けなどのために鈴を腰につけて行ったりします。
 
また、「土鈴」が昔の祭祀遺跡から発見されることからも分かる通り、
儀式にも使用されていました。
鈴の音は邪気を払い、神様を降ろしてくれるの道具として
古代の占いやお祭りには大事な役割を果たすものだったのです 
今でも、神社に参拝した際に鈴を鳴らす習慣がありますが、
それも、その場を清めて神を呼ぶ行為の一つです。
 
 

「土鈴」の起源

「土鈴」の起源は古く、
縄文時代の遺跡や古代の祭祀遺跡から発掘されています。
 
当時は、球形または楕円形で、穴が無く、
粘土・砂・植物繊維を混ぜて焼成されていました。
古墳時代中期の5世紀頃になると、金属製の丸い鈴も出現しています。
 
江戸時代の終わりなると、神社や寺院から広く庶民に向けて
様々な土鈴が授与されるようになります。
魔除け、厄除け、虫除け、安全祈願の願いを込めた小さな土鈴を
参詣土産として人々は買い求め、
子供のため、病気の家族のため…と土鈴を慈しみました。
土鈴は、家の戸口に掛けたり、帯に結び留めたり、根付にしたりして、
身の守りとして使用しました。
 
また、江戸後期には庶民が経済力を持ち始めたことから、
農村部などでは、身近にある安価な材料を用いて、
自給自足的な玩具生産が始まります。
現在「郷土玩具」と呼ばれる全国各地の土製玩具や人形の産地で
「土鈴」が作られ、次代に継承されていきました。
 
 

土鈴の種類

土鈴の種類は様々です。
例えば猫や犬、狐など、福を呼ぶとされる動物、十二支、
だるま、恵比寿・大黒天など七福神、宝船、福助などから、
ただ「魔除」という文字が記されただけのものまで、多種多様です。
 
岐阜県などでは、土鈴を養蚕室や納屋の中に吊るすことで、
蚕の繭をねずみなどの害獣から守ることが出来ると信じられていました。
そのため、「土鈴」を「蚕鈴」(かいこすず)と呼び、
養蚕と豊穣を祈る縁起物として親しまれてきました。
 

鈴の音

「土鈴」は、縄文時代から粘土を焼いて作られているほど
歴史の古い縁起物ですが、
「鈴」で大事なことは、
力があるのは「鈴」本体ではなくて、「鈴の音」だということです。
「音」を出してこそ力を発揮するのだということです。
 
ですから、鈴はしまったりしないで、鳴らしましょう。
(騒音にはならないと思いますし。)
 
また、選ぶ時も、土鈴の音をきちんと確認して、
自分にとって「良い音」と感じたものを選ぶのが、
「土鈴」を縁起物とするのに重要なポイントです。