辛夷(こぶし)

 
日本原産で、各地の山林に自生する
モクレン科の落葉高木。
蕾が拳に似ているので、「辛夷」(こぶし)という
名が付けられたと言われています。
苞(ほう)の膨らみが筆に似ていることから
「木筆」とも書きます。
 
 
蕾を人の拳(こぶし)に見立て、
「握りこぶしで幸せを掴む」からとか、
ゴツゴツとした実が
「子供の握りこぶしのようだ」とかいって
縁起の良い木とされてきました。
 
 
葉に先立って木蓮よりやや小ぶりの
真っ白い色の六弁花が開き、一樹を覆います。
この花は香水の原料になるほど芳香が強く、
枝を折っても良い香りがします。
 
地方によっては、
花が上向きになると「晴れ」、
下向きに咲くと「雨」として、
天気予報として利用されたようです。
 
 
 
ところで「辛夷」(こぶし)には
たくさんの別名があります。
 
例えば『♪ 北国の春』という歌にあるように、
春を象徴する辛夷には「春の神が宿る」とされ、
「望春花」「迎春花」などといった
漢字名が当てられることもあります。
 
地方によっては、辛夷の花の開花時期を
田打ち作業や畑の種蒔きに取り掛かる
目安としたことから
「田打桜」「田まき桜」「苗代桜」
「種まき桜」などと呼びました。
 
 
 
また秋につける赤い実の種が辛いことから、
「やまあららぎ」「こぶしはじかみ」という
名も生まれました。
 
 
辛夷の蕾を乾燥させたものは
慢性鼻炎、蓄膿症に効果があるとされる
「辛夷」(しんい)という生薬となりました。