鷽替え神事(うそかえしんじ)


「初天神」の日には、
「天神さん」の名で親しまれ、
学問の神様として知られる
菅原道真公を御祭神とした、
日本各地にある「天満宮」や「天神社」で、
「鷽替え神事」(うそかえしんじ)が行われます。
 
 

「鷽替え神事」(うそかえしんじ)とは

「鷽替え神事」(うそかえしんじ)とは、
毎年1月25日の「初天神」の日に
行われることが多い開運招福を祈願する
行事です。
 
木彫りの「鷽鳥」(うそどり)
毎年取り替えることによって、
「今までの悪しきをウソとなし、
 全ての吉(よき)に鳥かえる」とするもので、
古くから天神信仰のみに伝わる独特のもの
です。
 
参詣者は神前に集い、授かった鷽を
「替えましょう、替えましょう」と
声を掛け合いながら
人の手から手へと渡して取り替えていきます。
何度も何度も取り替えていくことによって、
前年に起こった悪いことを
嘘(鷽・うそ)であったことにして、
吉事に替えることが出来ると言われています。
 
菅公は「学問、出世の神様」として
有名であると同時に「正直の神様」、
無実の罪を清める
「雪冤(せつえん)の神様」としても有名で
嘘の罪滅ぼしを天神様へ祈願する信仰が
ありました。
私達の身に振り掛かった
一年間の凶事を「嘘」(うそ)と考え、
天神様の「誠」(まこと)に替えていただき、
正しい幸運を招くという意味の神事です。
 
「鷽替え」をせず、
鷽のみ配布する神社もあります。
持ち帰った鷽は、
お守りとして神棚にお祀りしたり、
テレビ台の上に置物として飾るなど
様々な場所に置かれ、
鷽が幸せを運んで来てくれるよう願います。
 

「鷽鳥」(うそどり)とは

 
「鷽鳥」(うそどり)は実在する鳥です。
スズメ目アトリ科で、
大きさはスズメより少し大きいくらい。
頭と尾が黒く、
メスは茶色と黒色の配色ですが、
オスは背や腹は灰色と黒色とシックですが、
頬から喉元は美しい紅色をしています。
日本では、漂鳥または冬鳥として
全国に広く分布します。
本州中部以北の亜高山帯などで繁殖し、
冬は九州以北の低地に移動して越冬します。
 
ところで「うそ」という名前は、
ヒーホーと口笛のような鳴き声から
口笛を意味する古語「おそ」から来ていると
言われてます。
 
美しくておっとりした感じに見えますが、
群れを作り桜並木や果樹園などにやって来ては、
膨らみかけた花の蕾をむしり取り、
食べ尽くしてしまいます。
そのため、桜を守るために駆除している
ところもあります。
 
 
菅原道真公はこの「鷽鳥」(うそどり)
大変可愛がっていらっしゃいました。
大宰府へ左遷された翌年の
延喜2(902)年1月7日、
道真公が大切な神事を行っていた際に
無数の蜂が襲来したことがありましたが、
そこへ愛鳥である鷽鳥が飛来して
蜂を全てを食べ尽くしたことで、
危機から脱脱することが出来たと
言われています。
この故事から「鷽鳥​は厄災をうそにし(祓い)、
幸運を招く鳥」とされ、祀られるように
なりました。
また、「鷽」
学問の"学"の旧字体の「學」
冠が同じである事から、
「天神様のお仕え鳥」としても
祀られております。
 

日本各地で行われる「鷽替え神事」

日本各地にある「天満宮」や「天神社」では、
「正月」や1月25日の「初天神」の日に
行われることが多いのですが、
香川県の「滝宮天満宮」の「鷽かえ祭」は
毎年4月24日に、
菅原道真公ご誕生地、奈良県奈良市の
菅原天満宮」では、
6月25日に誕生祭と鷽替え神事が行われ、
こちらは大勢でその場で交換をしています。
 
なぜか、天神信仰の中心の一つでもある
京都の「北野天満宮」では鷽替え神事は無く、
木うそも配布されません。
但し「北野天満宮」から勧請された天満宮でも
鷽替え神事を斎行する神社は多くあります。
 
木うそ
全国の天満宮では、鷽替え神事などに
「鷽」をかたどった木彫りの開運のお守り
「木うそ」が配られます。
それぞれの神社で、少しずつ姿かたちや趣きが
違っていますが、可愛らしい形が人気です。
 
太宰府天満宮の「鷽替え
「鷽替え神事」の起源は、太宰府天満宮
寛和2(986)年から始まったものと
言われています。
 
同じ日に続けて行われます。
まず、1月7日の夕方酉の刻(午後6時)に、
「替えましょ、替えましょ」の掛け声のもと、
参拝者が手にした「木うそ」をお互いに
交換し合います。
そして21時頃、鬼すべ堂前に積まれた
松葉や藁に、御本殿で起こされお祓いされた
御神火で火がつけられ、「鬼すべ神事」が
始まります。