「縁日」(えんにち)と言えば、
「神社で開かれるお祭りや屋台がたくさん並ぶ催し」が
イメージされますが、本来の意味は違います。
「縁日」とは、
「有縁の日」(うえんのひ)とか
「結縁の日」(けちえんのひ)を略した言葉で、
元々は仏教の言葉です。
「有縁の日」(うえんのひ) とは、
神仏がこの世に縁(ゆかり)を持つ日のことで、
「結縁の日」(けちえんのひ)とは、
神仏が世の人々を救うために手を伸ばして、
特定の神仏と人が縁を結ぶことが出来る日のことを言います。
つまり、神仏の降誕や、救済、示現、誓願の日など、
神仏に縁のある日には祭祀や供養などが行われるので、
この日に特定のお寺や神社に参詣すれば、
特別なご加護があると信じられてきました。
平安時代には、
「阿弥陀」「観音」「お地蔵さん」の縁日が盛んに行われ、
鎌倉時代には、一定の日が「縁日」と固定されてきました。
江戸時代になると、「縁日」は盛んに行われるようになり、
多くの人々が寺社を訪れて賑わうようになりました。
そうすると、こうした参詣者目当ての商人達が市を立て、
夜店や見世物小屋なども出るようになり、
信仰を集めることの他に、庶民が楽しめる場として変化します。
「縁日」にお祭りが催されるようになり、出店などが多く出て、
現代の出店がひしめくスタイルの「縁日」となっていきました。
神社やお寺では、
祀られている神仏によって、定期的に縁日が開催されています。
有名な縁日だと、
京都・北野天満宮の「天神さん」や
京都・教王護国寺の「弘法市」、
東京・浅草浅草寺の「四万六千日(ほおずき市)」
などがあります。
主な「縁日」には、次のようなものがあります。
水天宮 |
(毎月5日、1日・5日・15日とする所もある)
ご利益は、漁業や海運業、農業、水商売、子宝や子育て。
水天宮は福岡県久留米市の水天宮を総本宮とする
日本各地にある神社です。
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薬師如来 |
(毎月8日、12日)
薬師如来は病苦を救い、持病を治す法薬を与えるという
医薬の仏として広く信仰されています。
左手に薬壷(やっこ)を持ち、
右手の薬指が前に出ているのが特徴です。
ご利益は、長寿、病気平癒など。
薬師寺(奈良)、法隆寺(奈良)、醍醐寺(京都)などが有名。
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鬼子母神 |
毎月8日、18日、28日)
「鬼子母神」は、元々は鬼神の妻で、
千とも一万ともいわれる多くの子を持ちながら、
他人の子をさらって食べていたのを、
お釈迦さまに諭されて悔い改め、
人々の子供を守っていくことを誓いました。
端麗な姿の女神で、子供を懐に抱いています。
ご利益は、ご利益は安産、子育(こやす)など。
雑司ヶ谷(東京)、入谷(東京)、中山(千葉)などが有名。
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金毘羅 |
(毎月10日)
「大物主神」を祀っています。
「海の神様」として
漁業、航海など海上の安全を守ってくれる他、
農業殖産の神、医薬の神、
技芸(音楽や芸術関係)の神としても有名。
香川県琴平の「金毘羅宮・金刀比羅宮」が
全国の金比羅神社の総本宮。
その他、東京都港区虎ノ門の琴平神社などがあります。
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妙見 |
(毎月1、15日)
妙見菩薩は北斗七星を神格化した菩薩です。
国土を守護し、災害を減除する他、
人々の貧窮を救うとされます。
大阪の能勢妙見や、熊本八代の八代神社妙見宮などが有名。
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閻魔 |
(毎月16日)
地獄の王として知られる閻魔大王。
特に旧暦の1月と7月の16日は、
「地獄の釜の蓋も緩む」とされ、参詣客で賑わいます。
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歓喜天 |
(毎月1日、16日)
歓喜天はヒンドゥー教のシバ神の異称で、
後に仏教に帰依した神と言われています。
聖天様の名で呼ばれることもあります。
病気治癒、子宝、商売繁盛など、
現世のあらゆる願いを叶えてくれるとされます。
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観音菩薩 |
(毎月18日)
「観音様」は、
この世の人々の声[音]を見極め[観]、
自在に救うとされており、
仏(如来)の資格があるのに、悩み苦しむ人々を救い、
仏の道に導くために菩薩にとどまって
手を差し伸べているのだとされています。
広大無辺の慈悲の心を持って、
その名前を唱えるだけで救われると言われてます。
ご利益は縁結び、厄除けなど。
浅草寺(東京)、清水寺(京都)、長谷観音(鎌倉)などが
有名。
浅草浅草寺の「四万六千日」(しまんろくせんにち)は、
「ほおずき市」の名前でも知られる、
毎年7月9日・10日に行われる縁日です。
この日は、100日分や1000日分などの功徳が得られる
特別な日=功徳日とされ、
参詣するだけで46,000日分の功徳があると言われています。
この「縁日」に行われている「ほおずき市」の屋台は、
日本の夏の風物詩として広く知られています。
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弘法大師 |
(毎月21日)
「お大師様(空海、弘法大師)」の忌日3月21日には、
真言宗の各お寺で御影供(みえく)と呼ばれる法会(ほうえ)を行い、
毎月の21日を縁日としています。
12月21日の「終い弘法」は、大師参りの人々で特に賑わいます。
ご利益は、厄除け。
西新井大師(東京)、川崎大師(神奈川)、東寺(京都)などが有名。
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地蔵菩薩 |
(毎月24日)
「地蔵菩薩」は、
お釈迦様が亡くなってから(入滅されてから)
次の仏様になるとされる
「弥勒菩薩」(みろくぼさつ)が現れるまでの
56億7千万年の間、この世に現れ、
仏様代わって民衆を救ってくれると言われてます。
特に子供を救ってくれると信じられていて、
子安地蔵、子育て地蔵などが信仰されてきました。
1月24日に「初地蔵」が行われ、
旧暦7月24日には「地蔵盆」が行われています。
ご利益は、子育て、子授けなど。
とげぬき地蔵(東京)、八尾地蔵(大阪)、壬生寺(京都)などが有名。
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愛宕権現 |
(毎月24日)
伊邪那岐命と伊邪那美命との間に生まれた
火を司る神「迦具土神」(かぐつちのかみ)を祀る神社。
火災を防ぐ「火伏せ(ひぶせ)の神」として有名。
ご利益は、火防守護、家内安全、殖産振興。
京都市右京区の北西部にある
「愛宕山」の山頂に鎮座する「愛宕神社」は、
全国に約900社を数える愛宕神社の総本社。
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天神 |
(毎月25日)
菅原道真の命日に因んだ天満宮の縁日です。
学問の神様として信仰を集めています。
1月25日「初天神」、12月25日の「終い天神」などでは、
造花の梅の枝に小判をつるした縁起物が売られています。
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不動明王 |
(毎月28日)
密教では、「大日如来」(だいにちにょらい)の使者として、
仏道の障害となる煩悩や悪鬼・悪獣などを追い払う、
修行者の守護者として信仰されています。
一般的には、
交通安全、家内安全、商売繁盛のご利益があるとされています。
ご利益は、病魔退散、交通安全、商売繁盛など。
成田不動尊(千葉)、高幡不動尊(東京)、
大山不動尊(神奈川)などが有名です。
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大黒 |
(甲子“きのえね”の日)
元々は、インドの「戦いの神様」で、
「厨房の守護神」ともされていました。
日本では、大黒が大国に通じることから
「大国主命」(おおくにぬしのみこと)の民族信仰と結びつき、
室町時代から七福神のひとつとして祀られていました。
「大国主命」が鼠に救われたという言い伝えがあることから、
「甲子」(きのえね)の日を大黒様の縁日としています。
甲子の日は、年に6回あることから「6甲子」と呼ばれ、
特に11月の甲子が重んじられています。
ご利益は、商売繁盛、五穀豊穣、出世開運など。
護国院(東京)、西大寺(奈良)などが有名。
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弁財天 |
(己巳の日)
七福神のひとつで、音楽の神、災いを除く神などとして
知られています。
1月最初の巳の日を「初巳」として重んじ、
この日にお米やお金を包んでおけば、
金運に恵まれると言われます。
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摩利支天 |
(毎月の亥の日)
摩利支天は日光を神格した神で、国家と国民を守る女神です。
かつては芸者や蕪の相場師達に信仰されたそうです。
1月の最初の縁日を「初亥」と言い、特に人々で賑わいます。
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