神使「狐」

稲荷神社の境内には、キツネの像と出会うことが出来ます。
「お稲荷さん」と言えば
「キツネ」をイメージされる方が多いのではないでしょうか。
 
このキツネは、五穀豊穣の女神である
「宇迦之御魂神」(うかのみたまのかみ)=「稲荷神」のお使いです。
キツネと言っても、野山に居るキツネではありません。
神使であるキツネも神様と同じように、我々には姿形が見えないので、
「白狐」(びゃっこ)と呼ばれています。
 
 

キツネが稲荷神の神使となった理由

「山の神・田の神」の信仰

キツネがお使いとして選ばれたのには、
稲荷神が農業神であることと深く結びついています。
日本人には古くから神道の原形として
「山の神、田の神」の信仰があります。
これは春になると「山の神」が山から里へ降り、
「田の神」となって稲の生育を守護し、
収穫が終えた秋になると、
山へ帰って「山の神」となるというものです。
 
一方、キツネも農事の始まる初午の頃から
収穫の終わる秋まで人里に姿を見せ、
「田の神」が山に帰られる頃に山へ戻ります。
このように神道の原形である「田の神、山の神」と同じ時期に
姿を見せるキツネの行動から、
キツネが神使とされるようになったのです。
 

茶枳尼天=白晨狐菩薩

平安時代以降の神仏習合により、
稲荷神が仏教の守護神「茶枳尼天」(だきにてん)
垂迹とされたことも関係があります。
荼枳尼天は元はインドにおける鬼神で、
6か月前に人の死を知り、
その心臓を取って食べるという恐ろしい女神です。
但し、日本に伝わってからは福神化され、
茶枳尼天はまたの名を「白晨狐菩薩」(びゃくしんこぼさつ)と言い、
キツネの霊とされ、狐に乗った稲荷女神の姿が広まります。
このことから、いつの間にか一般民衆の間で、
稲荷神の御祭神とキツネが混同して理解されてしまいました。
 

御饌津神

稲荷神はまたの名を「御饌津神」(みけつがみ)と言います。
この「ミケツ」が混同されて、
「三狐神」(みけつがみ)と記されたことも一因と考えられます。
因みに、御饌津神とは文字通り
「御」(=尊称)「饌」(=食物)「津」(=の)神で、
食物を司る神を意味していて、キツネとは全く関係はありません。
 

稲穂を想起させる

狐の毛並みの色、尻尾が稲穂を想起させることにも因むと
言われています。
 

くわえる物によって御利益が異なる

 
神社で祀られている「狛狐」をよく見てみると、
稲穂、巻物、鍵、玉など、様々な物をくわえています。
それらには、像を奉納した崇敬者の願いが込められています。
  • 鍵 :稲蔵の鍵のことで、富貴豊穣を意味する
  • 稲穂:五穀豊穣を表す
  • 玉 :宝珠を表している
  • 巻物:知恵を象徴する

 

 

主な御利益

  • 五穀豊穣
  • 商売繫盛
  • 諸願成就
  • 子宝・安産(足元に子ギツネを配したもの)
 

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