「五色不動」の「五色」とは、
東西南北に中央を合わせた
5つの方角をそれぞれ色で示したものです。
また、「不動」とは
仏教の信仰対象となっている「不動明王」のことを指しています。
一般的に「五色不動」と言えば、
東京の五色不動「江戸五色不動」のことを指します。
目黒・目白・目赤・目青・目黄(2か所)の
計6カ所の不動尊がです。
江戸時代、三代目将軍・徳川家光が、江戸の繁栄を願って、
江戸城を取り取り囲む形で5つの不動尊を配置したと言われています。
色の理由は定かでないようですが、
「陰陽五行説」に由来すると言われています。
- 木 : 東 ー 青(緑)- 青龍
- 火 : 南 ー 赤 - 朱雀
- 土 : 中央ー 黄 - 麒麟
- 金 : 西 ー 白 - 白虎
- 水 : 北 ー 黒 - 玄武
「江戸五色不動」中で馴染があるのは、
目黒区にある「目黒不動」でしょう。
しかしそれ以外の不動尊も、
建物に趣がある、近くに史跡が多いなど、沢山の魅力があります。
今回は、東京のパワースポットとしても注目を浴びる
「江戸五色不動」の各不動の歴史と魅力をご紹介します。
目黄不動尊(永久寺)
「目黄不動尊」である「永久寺」は、
東京メトロ日比谷線の三ノ輪駅から近い、台東区三ノ輪にあります。
日光街道(現在の昭和通り)に近く、
江戸時代には、江戸から日光へと向かう人達の道中の安全を祈願して、
永久寺が目黄不動尊として指定されたのではないかと考えられています。
境内には、樹齢千年を超えると言われる松の木があり、
パワースポットと呼ぶに相応しい場所となっています。
また、永久寺のご本尊である阿弥陀如来には、
死後に極楽に行けるという「極楽往生」と
現世を安穏に暮らすことが出来るという「現世安穏」のご利益があります。
- 正式名称:養光山金錍院永久寺
- 宗 派:天台宗
- 本 尊:阿弥陀如来
- 住 所:台東区三ノ輪2-14-5
(地下鉄日比谷線「三ノ輪駅」)
目黄不動尊(最勝寺)
もうひとつの「目黄不動尊」は江戸川区の「最勝寺」です。
慈覚大師(円仁)が860年に創建したと言われる、
千年以上もの歴史を持つお寺です。
江戸時代には、徳川家光が鷹狩りをする際に立ち寄るなど、
将軍からも篤く崇拝されていました。
境内にある寺院墓地には、
江戸時代の狂歌師・戯作者・烏亭焉馬(うてい・えんば)や、
明治時代の俳人である富田木歩などのお墓があります。
最勝寺のご本尊である釈迦如来には、
「仏智悟入」(ぶっちごにゅう)のご利益があり、
拝んだ人は悟りを開くことが出来るとされています。
お稲荷さんもあります。
- 正式名称:牛宝山明王院最勝寺
- 宗 派:天台宗
- 本 尊:釈迦如来
- 住 所:江戸川区平井1-25-32
(総武線「平井駅」)
目赤不動尊(南谷寺)
「目赤不動尊」である「南谷寺」は、
元々は、「赤目不動」と言われていました。
万行律師という僧が、
1615年頃に伊賀国(現:三重県)の赤目山で
不動明王像を授けられたことから名付けられ、
将軍徳川家光が「目赤不動」に名称を変えるように命じたと
伝えられています。
南谷寺のご本尊は
「不動明王」と「阿弥陀如来」の二尊で、
阿弥陀如来の「極楽往生」「現世安穏」と、
不動明王のご利益である
「家内安全」「交通安全」「五穀豊穣」「商売繁盛」などが
授かると言われています。
- 正式名称:大聖山東朝院南谷寺
- 宗 派:天台宗
- 本 尊:目赤不動明王・阿弥陀如来
- 住 所:文京区本駒込1-20-20
(地下鉄南北線「本駒込駅」)
目白不動尊(金乗院)
「目白不動尊」の「金乗院」は、
16世紀終わりに永順という僧侶が創建したと言われています。
元々、目白不動尊の明王像は
文京区にある別の寺院に置かれていましたが、
昭和20(1945)年の戦災によって建物が消失してしまったため、
金乗院へと移されて、そこが新しい目白不動尊となりました。
江戸五色不動の中で唯一、真言宗のお寺で、
奥に弘法大師の像があります。
ご本尊の「断臂不動明王」(だんぴふどうみょうおう)は、
弘法大師作と伝えられる秘仏です。
目白不動尊のご本尊「断臂不動明王」(だんぴふどうみょうおう)は、
第二次世界大戦の戦火を免れていることから
「厄除け」のご利益があると言われています。
他には「商売繁盛」のご利益もあるとされています。
目白不動は非公開ですが、
その化身とされる「倶利伽羅不動庚申像」が本堂前にあります。
その下には「三猿」(見ざる、言わざる、聞かざる)が彫られています。
罪科から人間を守ってくれています。
境内にある山門や板碑は、豊島区の有形文化財に指定・登録されています。
- 正式名称:神霊山金乗院慈眼寺
- 宗 派:真言宗
- 本 尊:断臂不動明王
- 住 所:豊島区高田2-12-39
(東京メトロ副都心線「学習院下駅」)
目青不動尊(教学院)
慶長9(1604)年に江戸城内の紅葉山に建てられ、
赤坂、青山と何度かの移転を経て、
明治41(1908)年に現在の世田谷区太子堂に移されました。
「目青不動尊」は「青い空の色を担う不動尊」であることから、
天と地を繋ぐ「縁結び」のご利益があると言われています。
残念ながら「目青不動」は秘仏のため非公開ですが、
いつでもお参り出来る青銅製の「前立ち不動明王像」が人気です
不動堂と本堂の間には、
チシャノキとイチョウの2本の大木があります。
チシャノキは、6~7月頃に、星形の小さな白い花を多く咲かせます。
イチョウは、12月初めに辺り一帯を黄色く染めます。
- 正式名称:竹園山最勝寺教學院(教学院)
- 宗 派:天台宗
- 本 尊:阿弥陀如来
- 住 所:世田谷区太子堂4-15-1
(東急田園都市線・世田谷線「三軒茶屋駅」)
目黒不動尊(瀧泉寺)
「目黒不動尊」の「瀧泉寺」は関東最古の不動霊場であり、
熊本の「木原不動尊」、千葉の「成田不動尊」と合わせて
「日本三大不動」のひとつに挙げられています。
808年に慈覚大師(円仁)によって開山された
千年以上の歴史を持つ寺院であり、
明治時代には西郷隆盛や東郷平八郎が
篤い信仰を寄せたと言われています。
目黒不動(瀧泉寺)は、広い境内と数々の像で有名です。
ご本尊である「目黒不動明王」は、
12年に一度、酉年にだけご開帳されます。
「家内安全」「商売繁盛」「病気平癒」「交通安全」など
多くのご利益があるとされています。
「愛染明王」(あいぜんみょうおう)は怖い表情をなさっていますが、
「恋愛」「縁結び」「家庭円満」といった
女性に嬉しいご利益があると言われています。
また、愛染明王は「愛欲を否定しない明王」であることから、
今でも夜のお仕事をしている女性から篤い信仰が寄せられています。
「水かけ不動」のご加護により、
ここの水は一度も涸れたことがないと言われています。
「大日如来像」は本堂裏の林の中に、屋根付きで鎮座されています。
4m弱の高さに驚かされます。
毎月28日の縁日と、桜の咲く頃、特に賑わいます。
- 正式名称:泰叡山護國院瀧泉寺
- 宗 派:天台宗
- 本 尊:目黒不動明王
- 住 所:目黒区下目黒3-20-26
(東急目黒線「不動前駅」)