雨降花(あめふりばな)

 
梅雨の季節になると、
雨の中で美しく咲く花々を、
日本人は「雨降花」(あめふりばな)と呼んで
愛でてきました。
 
「雨降花」(あめふりばな)と呼ばれる花は
沢山あります。
 
七十二候「乃東枯」の「乃東(靭草)」、
 
七十二候「菖蒲華」の
「菖蒲(アヤメ、ハナショウブ)」、
 
七十二候「半夏生」の「半夏(烏柄杓)」、
その一つです。
 
 
他にも、紫陽花(あじさい)、露草(つゆくさ)
昼顔(ひるがお)、蛍袋(ほたるぶくろ)
擬宝珠(ぎぼし)、梔子(くちなし)
木槿(むくげ)・・・。
そのほとんどが、野や道端に濡れて咲く
小さな花です。
 
 
「雨降花」(あめふりばな)と呼ばれる理由には、
  • その花を摘むと雨が降る
  • その花が咲くと雨が降る
  • 雨が降るとその花が咲く
  • 梅雨の頃にその花が咲き始める
  • 雨に濡れている様子が特に美しい
など様々です。
 
名の由来も地方によって様々のようです。
寒い地方では、「雨が降る」 には
「雪ではなくて」という意味が含まれていて、
暖かい季節の到来を告げる花も
「雨降花」と呼ばれるそうです。
 
 

紫陽花(あじさい)

雨が似合う花としては、
まず最初に思い浮かぶのが「紫陽花」。
雨によって色が七変化する、
不思議で美しい花てす。
 

露草(つゆくさ)

日本で古来から自生し、梅雨期から咲く、
爽やかな青色の花です。
名前の由来は諸説ありますが、
朝露を帯びながら朝咲く様子や、
朝咲いて昼には萎む朝露のように儚い様子から
名付けられたと言われています。
『万葉集』にも恋の歌で登場する植物です。
 

昼顔(ひるがお)

ちょうど梅雨期に薄いピンク色の花を咲かせ、
別名「雨降り花」と呼ばれる「昼顔」。
「摘み取ると雨が降る」という言い伝えが
あります。
毎日そこに咲き続けているように見えますが、花の命は一日限り。
朝、次々に花を咲かせては、
夕方には萎んでしまいます。
 

蛍袋(ほたるぶくろ)

雨期に、釣鐘に似た可憐な花をつけます。
花筒の中に蛍を入れて遊ぶことからついた
名前です。
「釣鐘草」(つりがねそう)
「風鈴草」(ふうりんそう)とも呼ばれます。
 

擬宝珠(ぎぼし)

梅雨の間から初夏にかけて開花します。
朝開いて午後には萎れてしまうという
儚い命の一日花です。
梅雨の雨を浴びて水滴が滴った
淡紫、紫、白色などの淡く渋みのある
花の色合い日本人に好まれてきました。
 
蕾の形が橋の欄干にある「擬宝珠」(ぎぼし)に似ているから、「葱坊主」(ねぎぼうず)に似ていることから、「ぎぼし」と名付けられたと
言われています。
江戸中期、観賞用に庭園に植えるようになり、園芸種も多数生まれました。
シーボルトが米国へ持ち帰って以降、
欧米で交配がなされ、
多くの品種が作り出されました。
 

梔子(くちなし)

梅雨の時期になると、白く可愛らしい花から
甘い香りを放ちながら咲く、純白の花です。
「くちなし」の語源は、
実が熟しても割れないことから。
つまり「口無し」という訳です。
 

木槿(むくげ)

梅雨の頃から秋までの長期間、
10~20cmの大きなハイビスカスに似た花を
咲かせる花です。
「槿花一日の栄」(きんかいちじつのえい)とか、
「槿花一朝の夢」という諺がありますが、
これは木槿の花が1日で萎んでしまうことを
栄華のはかなさに掛けた言葉です。
「秋の七草」として平安時代の昔から
観賞されてきました。