七宝(しっぽう)

同じ大きさの円を円周の4分の1ずつ重ねていく文様で、
有職文様では「輪違」(わちがい)と呼びます。
光を表す菱のような形と、花びらのような形の組み合わせが見えるという
仕掛けになっています。
「七宝」とは仏教の用語で七つの宝物を示す言葉であり、
「七珍」(しっちん)とも呼ばれています。
漢・魏・唐・宋と時代により国によって若干の相違があるものの、
概ね次の七つの宝物とは次の7つになります。
  1. 金  (こん)
  2. 銀  (ごん)
  3. 瑠璃 (るり)
  4. 玻瓈 (はり)
  5. 硨磲 (しゃこ)
  6. 赤珠 (しゃくしゅ)
  7. 碼碯 (めのう)
という七つの宝物は、
富裕、繁栄、地位の高貴さの象徴として、
また美しいものを愛でる悦楽だけがあるのではなく
「七つの牢獄」とも言えるような状況をも受け入れることとなるのだと
仏教の教えは説きます。
文様との関係は不明とされていますが、
円が四方八方または十方に広がり、
その音通から仏教の7つの宝を表す
「七宝文」と呼ばれるようになったとの説もあります。
 

1.七宝繋ぎ

円を4分の1ずつ重ねて、繋いだ文様のことです。
「七宝」の円形は円満を表すことから、
「吉祥文様」として扱われることになり、
「宝尽くし」の一つにも数えられています。
円の中心に四弁花を入れたり、
重なり合った円周の部分に模様を施したりと、
様々な意匠が見られます。
円の中心に花を入れたものは「花七宝文様」とも言います。
現在は主に礼装用の帯に用いられています。
 

2.雪花七宝

「七宝」の円を「雪輪」で表現し、
更に「雪輪」の中に
雪の結晶を意匠化した雪花をあしらった
珍しい七宝文様です。
絽の袋帯は、絽の訪問着や付下げと合わせて
夏のフォーマルに用います。
 

3.鳥襷文

有職文様の代表的な文様です。
4分の1の円周の中に尾長鳥を2羽ずつ斜めに配していますが、
その形が襷をかけたように見えることから、この名があります。
円の中に花菱を入れたものは「鳥襷花菱文」と言い、
小葵を入れたものは「鳥襷小葵文」と呼びます。
現在は主に格調の高い袋帯に用いられています。
 

4.破れ七宝

「七宝繋ぎ」を部分的に配した、
「七宝」が途中で破れたような文様を言います。
着物や帯の文様にアクセント的に用いられています。
 

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