牡丹(ぼたん)

古くから「花の王様」と呼ばれて親しまれてきた
「牡丹」(ぼたん)
和の雰囲気も洋の雰囲気も持っており、
品種改良も多岐に渡ります。
ボリュームたっぷりの艶やかな花姿は、
一輪あるだけで気品と風格を漂わせています。
 

牡丹の基礎知識

 
牡丹の基礎知識
  • 学 名:Paeonia suffruticosa
  • 別 名:フウキグサ (富貴草)
        ハツカグサ (二十日草)
        ヒャッカオウ(百花王)
  • 英語名:Tree peony
  • 科属名:ボタン科ボタン属
  • 原産地:China北西部
  • 開花期:4~6月
  • 花の色:白、赤、赤紫、紫、薄紅、
        黄、ピンク、オレンジ
 
 
「牡丹」は奈良時代(8世紀)に、
薬用として遣唐使によってもたらされたと
言われていますが、その花の美しさから、
平安時代には観賞用に栽培されるようになりました。
『枕草子』や『蜻蛉日記』にも
「ぼうたん」の名で登場しています。
 
江戸時代に入ると庶民にも栽培が広まりました。
特に元禄から宝永年間(1688-1711)に流行を来し、
この時期に刊行された代表的な園芸書である
『花壇地錦抄』には300品種以上の牡丹が掲載
されていることから、その人気の程が伺えます。
ただ、それらはその名をとどめるばかりで、
現在栽培される品種の多くは、明治以降に作出
されたものです。
 

牡丹の名前の由来

 
ボタンは、漢語「牡丹」の音読みです。
「牡」はオスを意味し、雄しべや雌しべが
花弁になることからつけられたとされています。
「丹」は赤色の意味。
現在は色の種類が豊富な牡丹ですが、
元々は赤色が基本とされたことから
「丹」がつけられ、「牡」と「丹」を合わせて
「牡丹」になったと言われています。
 
他には、
漢語の「牡丹」はギリシャ語で「植物」を意味する
「Botane」の音訳といった説、
実は「牡丹」はブータン原産で、
「ブータン」が訛り、
やがて「ボタン」になったという説もあります。
 

牡丹(ぼたん)の花言葉

 
花びらを何枚も重ね、
大輪の花を咲かせる牡丹の花言葉は
「風格」「富貴」「恥じらい」です。
 
そのゴージャスな花姿から、
「風格」という花言葉を持つようになり、
原産国のChinaでは
「花神」「花王」という別名で呼ばれ、
中国で最も格式の高い花とされました。
そこからつけられたのが
「王者の風格」「富貴」の花言葉です。
 
「恥じらい」の由来は諸説ありますが、
花の中央にある芯の部分を隠すような花姿が
恥じらっているように見えるからという説が
よく知られています。
 

 
なお、色別の花言葉は特に設けられていません。
 

怪談『牡丹灯籠』

 
ところで「牡丹」「花言葉」と検索すると、
「怖い」というキーワードが出てきます。
牡丹に怖いイメージを抱く人も
少なくないようですが、
牡丹に「死」や「呪い」を意味するような
怖い花言葉はありません。
 
おそらく怪談『牡丹灯籠』(ぼたんどうろう)から
来ているのでしょう。
 

 
怪談「牡丹燈籠」(ぼたんどうろう)は、
明で作られた小説集『剪灯新話』の中に
収録されている「牡丹燈記」という話が
元となっています。
 
明治時代、落語家の三遊亭圓朝が『剪灯新話』を
を翻案した『御伽婢子』(おとぎぼうこ)や実話など
から着想を得て、『牡丹燈籠』を創作しました。
 
『四谷怪談』と『皿屋敷』と合わせて、
「日本三大怪談」と言われています。
 

『牡丹燈籠』のあらすじ

 
根津の清水谷に浪人の萩原新三郎という
内気な男がいました。
ある日、新三郎は知り合いの山本志丈に誘われ
亀戸の臥龍梅(がりゅうばい)を見に出掛けます。
その帰りに山本志丈の知り合いである
旗本・飯島平左衛門の別荘に立ち寄った際、
そこで娘のお露とその女中のお米に出会い、
新三郎とお露は恋仲になるのでした。
 
新三郎の帰り際、お露は
「また来て下さらなければ
私は死んでしまいますよ」と言い残します。
ところが内気な新三郎は
「お露」に会いたいと思っていましたが、
1人で会いに行く勇気がありません。
 
数ヶ月経ったある日、
新三郎の元を訪れて来た山本志丈から
お露が恋焦がれるあまりに死んでしまったこと、
お米も看病疲れで後を追うように死んでしまった
ことを告げられます。
 

それからというものの、新三郎はお露のために
念仏を唱えるだけの毎日を送っていました。
盆の十三日の夜、新三郎がいつものように
お露に思いを馳せていると、
カランコロン、カランコロンと下駄の音が
聞えてきます。
音のする方を見ると、牡丹芍薬の灯籠を携えた
お米とお露が歩いているではありませんか。
3人は再開を喜び、次の晩もその次の晩も
新三郎とお露の逢瀬は続きました。
しかし、お露の正体は怨霊(亡霊)でした。
 

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」

昔からその美しさが称えられてきました。
古くから、美しい女性の姿を形容する言葉として
「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」
という言葉があります。
 
なぜ立ち姿が「芍薬」なのかと言うと、
芍薬はスラリと伸びた茎の先端に
美しい花を咲かせるからです。

 
一方「牡丹」は
どっしりと横に広がるように伸びた幹から
花を咲かせる様子が椅子に座っている姿に
見えることからだそうです。
 

 
なお、「牡丹」と「芍薬」はともに
「ボタン科ボタン属」に含まれますが、
「牡丹」は「木本植物」で、
「芍薬」は冬期に地上部が枯れる
多年生の「草本植物」です。